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「財産調書の次は出国税か」

2012/05/12 08:30
国境に消える税金への対策

 今年立法化された国外財産調書制度は、資産の海外への逃避に対する施策ですが、欧米には以前から各国それぞれの個性をもった海外財産情報申告の制度があります。
 地続きのEU諸国や白人文化圏の国々では、課税回避のための人と物の異動が、わが国の場合に比較して古くから容易だったので、それへの対処としての租税施策にも歴史があります。


欧米諸国での制度状況

 例を挙げると、アメリカでは、納税者番号制度・海外資産に限らない広範な情報申告制度・罰則・強力な税務調査を一体とした制度化がなされています。フランスには、海外口座情報の報告・海外送金報告記録保存義務・富裕税による海外資産を含めた一般財産申告制度があります。カナダでは、保有海外資産の資料提出義務があります。スウェーデンでは、海外資産保有居住者に海外銀行等への照会同意義務があります。


物の異動の次は人の異動

 人の非居住者化という異動については、米・英・独・仏・蘭・加・墺・豪・デンマーク・フィンランド・ニュージーランドと、多くの欧米諸国で出国に係る課税制度を用意しています。
 その一つが、出国税で、出国に際し、財産を処分し現金化したものと仮定して所得税を課すものです。分類的には、全ての財産を処分したものとするのが一般出国税で、有価証券に限って処分したものとするのが制限出国税です。
 その外に、出国により非居住者となっても居住者とみなして課税を続けるみなし居住者課税制度があります。


国家による人と個人財産の捕捉

 富裕層への課税の強化は世界の流れですが、個人課税の重い国から軽い国に移住する富裕層囲い込みを目的にした各国家の租税戦略も又一方にあります。それでいて、富裕層自身の中から富裕層への課税強化の必要が唱えられるような時代にもなっております。さらに、各国の個人課税強化への担保として、国家による人と個人財産の捕捉を強化する試みが進んでいます。
 わが国でも、国境に消える税金への対策の研究が進んでおり、富裕層課税への強化も避けて通れないとすると、遠からず、出国に係る新しい制度案が出てきそうです。



ここが国境。ここを通り抜ければ永遠の旅人。
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「近い将来の税増収プラン」

2012/05/07 22:37
財務副大臣の発言から

 予算委員会で、財務副大臣が「所得再分配機能をどう取り戻すかが重要課題」とし、
@ 所得税・相続税の最高税率を上げる
A 富裕税という考え方もある
B マチマチな税率構造を見直す
と施策案を挙げていました。
 @は今、審議中の一体改革案の中で、すでに上程されています。
 AとBは、多分、財務省が腹案として、すでに準備しているものなのでしょう。


富裕税をめぐる国際状況

 現在、富裕税が施行されている国は、フランス、スイス、オランダ、ノルウェー、インドなどですが、過去、富裕税を施行させた経験のある国は日本を始め沢山あります。最近、ポルトガルが富裕税を復活させたというニュースがありました。
 いずれも税率は、0.2パーセントから3パーセントといった低率で所得税の補完税としての役割を持たされています。


日本の富裕税導入と廃止の歴史

 日本では、昭和22年(1947)に所得税の最高税率は85%になり、昭和24年(1949)のシャウプ勧告は、このように高い税率は勤労意欲にマイナスであるとして、所得税の最高税率を下げ、その補完税として富裕税を導入するように勧告しました。その結果、昭和25年(1950)に所得税の最高税率が55%に抑えられ、同時に0.5〜3%の累進税率で富裕税が導入されました。
 しかし、富裕税は税収総額が多くなく、資産の包括的把握に税務執行上の困難を来たしたため、昭和28年(1953)に廃止され、代わりに所得税の最高税率が65%に上げ直されました。
 国外財産調書制度創設につづき、財産債務明細書の制度強化が図られるとすると、日本でも富裕税の復活かもしれません。


税率構造多段階化という増税テクニック

 所得税や相続税の税率に3%、5%、10%刻みのところがあるので、刻み幅を統一する、という名目による案もありそうです。
 もし税率を1%刻みにしたら、10%税率の人の中には19%、20%税率の人の中には29%の税率になる人が出てきます。
 最高税率のこれ以上のアップは国際比較の上からして困難そうですが、税収の増加策としての税率構造の多段階化は極めて有効です。



サルコジさんは、富裕税廃止を唱えていたが、任期中に廃止できなかった。むしろ、世界的に富裕税復活の気運が強い。
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「中小企業特例の内外格差」

2012/04/24 21:53
大法人の100%子会社と中小企業特例

 平成22年税制改正で、中小企業に有利な特例は、大法人の100%子会社には不適用、とされました。次の特例項目です。
@ 800万円以下部分への19%税率適用
A 19%税率の15%への時限的軽減
B 欠損金繰戻還付不適用制度の中小企業不適用特例
C 同族会社の留保金課税不適用
D 貸倒引当金法定繰入率の中小企業特例
E 交際費損金不算入制度の中小企業特例


外国法人子会社への適用規定のないもの

 上記の@からEまでの項目は、親法人(資本金5億円以上)の100%子会社が内国法人の場合には、全部不適用なのですが、外国法人である場合には、CからEまでの有利規定項目がそのまま適用され続けています。平成23年12月改正、24年3月改正でも、これらの規定の全部について見直し改正がありましたが、内外格差の部分については、特に見直しはありませんでした。


内外格差の具体的様相

 @の規定は内国法人と外国法人について別々に規定しています。Aの条文は、内外の区別ない法人一般を対象にするもので、その中で内外の100%子会社排除の規定を置いています。@とAの規定には、内外格差はありません。
 Bの欠損金繰戻還付とCの留保金課税の規定は、従来から内国法人に対してのみの規定であり、新たな問題ではないので、これらには特に内外格差の指摘の必要がないかもしれません。
 問題は、DとEの規定です。これらの規定は、もともと、内国法人・外国法人に限定した規定ではありません。それにも拘わらず、内国法人である100%子会社のみを排除する規定を置きました。外国法人である100%子会社排除の規定はここにはありません。


なぜ内外格差を置いているのか

 外国法人に貸倒引当金の法定繰入をする会計慣行がないとか、交際費を使う商慣行や実績がないとか、という調査データでもあるのなら、ともかく、例えそうであったとしても内外格差規定にする必要があったとすることに理解が及びません。また、そういう説明を見聞したこともありません。
 立法趣旨から考えて、逆に、立法ミスなのではないか、と疑いをもってしまいます。



外国子会社なら交際費特例は使えます
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「それと気づかぬデリバティブ」

2012/04/12 23:18
原則は取得原価主義

 法人税法では取得原価主義が原則です。取得原価主義とは、資産の帳簿価格を、その資産の取得時に支払った金額に基づいて計上するもので、決算期末の時価に基づいて計上する時価主義と対をなす考え方です。取得原価主義のもとでは、評価損や評価益の計上はありません。


補充的にある時価主義の二つの態様

 ただし、法人税法でも、補充的には時価主義が採用されています。時価主義採用の態様は二つに分類されます。一つは、取得原価主義の修正の場合で、棚卸資産が著しい陳腐化等に該当した時、有価証券につき強制低価法適用に該当する時、資産が災害により著しい損傷を受けたことその他の事実により評価換えする時、などです。これらの場合には、評価損が計上されるだけで、評価益が計上されることはありません。
 もう一つの分類は、本来的な時価主義です。評価損だけでなく、評価益となる場合もあります。


本来的時価主義の三つの態様

 本来的時価主義の態様を三つに分類できます。まず、会社更生法、民事再生法等適用のケースです。これは評価益を出すことを目的とする、特殊な、例外的な態様です。
次は、外貨建て債権債務で、これについては、「発生時換算法」と、決算時に換算しなおす「期末時換算法」とがあり、両者の選択採用が可能なので、望まなければ、期末の評価替えはしなくても済むものです。
 もう一つは、売買目的有価証券と未決済のデリバティブ資産負債で、これらについては、複数の選択肢がなく、単純に時価評価が強制されます。


選択肢のない時価主義での失念の危険

 でも、売買目的有価証券については、その分類に該当するケースが特殊であることもあって、期末評価替えを失念するようなことはないと、思われます。
 ところが、未決済デリバティブ資産負債は期末に決済したものとみなして所得計算する、という規定になっているので、決済時は損失計上でも、期末時は利益計上ということもあります。
 デリバティブ取引が社会に深く浸透するようになり、貸借対照表にデリバティブ資産負債が気付き難い勘定科目で計上されていることがあります。決算作業における新しい留意点です。



これはデリバティブですね。時価評価してますか?
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「予算より先に成立する軽さ」

2012/04/08 16:35
税制改正は3月30日、予算は4月5日

 今年は、予算の成立よりも予算関連税制改正の成立が先行してしまいました。過去に、こんなことはありませんでした。
 昨年は、3月27日に予算が成立し、予算関連税制改正の一部がつなぎ法として3月30日に成立し、6月22日と12月1日に自公民3党合意により、大幅改正でないものを2段階で順次成立させ、残りは未成立でした。この顛末も過去にないケースでした。


平成24年度改正のタイトルと項目

 今年の法律のタイトルは、いつもの「所得税法等の一部を改正する法律」ではなく、「租税特別措置法等の一部を改正する法律」です。所得税・法人税・相続税などの本法にも改正があるにも拘わらず、です。
 改正税法の条文は、「第〇条 〇〇法の一部を次のように改正する」となっていて、一税法一条文で規定されています。
今年の条文構成は次の通りで、第一条が、所得税法ではなかったわけです。
第一条 租税特別措置法
第二条 所得税法
第三条 法人税法
第四条 相続税法
第五条 国税通則法
第六条 国税徴収法
第七条 租税条約実施特例法
第八条 外為関連国外送金調書法
第九条 東日本震災臨時特例法


平成24年度の改正内容

一、個人所得課税(25年分から適用)
1.給与所得控除について、給与収入の1500万円超に上限設定
2.特定支出控除に資格取得費等を追加し、給与所得控除額の1/2も適用
3.勤続年数5年以下の法人役員等の退職金、1/2課税廃止
二、法人課税 たいしたものなし
三、資産課税 たいしたものなし
四、消費課税 たいしたものなし
五、国際課税 国外財産調書制度創設
といった、ところが改正の内容で、中身の薄い印象です。
でも、衆議院ホームページにある法律案をワードにコピペしてみると、205ぺージあります。一昨年のものは、291ページ、その前の年は228ぺージでした。中身が無いのに、ページ数だけは、一人前です。



社会保障・税一体改革案ばかりが報道されている










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「バフェット&ロムニー」

2012/03/25 19:53
算数の復習

@A×15%+B×35%=$6,938,744
A(A+B)×17.4%=$6,938,744
 この@Aの連立方程式を解くと、
A=$35,092,498(88%)
B=$ 4,785,340(12%)、となります。

BA×15%+B×35%
 =$21,660,000×15.4%
CA+B=$21,660,000
 このBCの連立方程式を解くと、
A=$21,226,800(98%)
B=$  433,200( 2%)、となります。


何の応用問題だったか

 @Aはアメリカの著名な投資家バフェット氏の連邦所得税は、693万8744ドルで、実効税率が17.4%なので、氏の投資家所得とその他の所得の額と割合を求めよ、です。
BCは、共和党大統領候補として名乗り上げているロムニー氏の、2010年の夫妻による収入が2166万ドルで、実効税率は15.4%であるので、夫妻の投資家所得とその他の所得の額と割合を求めよ、です。
 アメリカでは、配当や譲渡益などの投資家所得は税率15%で、共に投資家所得以外がアメリカ連邦所得税の最高税率の35%に該当するものとし、他に控除すべきものがないとして計算すると、という前提での設問です。


欧米で盛んな富裕税論議

 この実例のように、巨額の金融所得を得ている人の税負担が少なすぎることからか、欧米の富裕層が自ら富裕層課税強化の発言をしており、スペインは保有資産に課税する富裕税、フランス・イタリア・ポルトガルは富裕層への所得税付加税を課すことにしています。アメリカでも、オバマ大統領が、バフェットルールを適用して年収100万ドル超の富裕層に増税する、と一般教書演説を行いました。


日本の場合で考えると

 日本の場合の投資家所得は上場株式については7%の分離課税税率で、所得税の総合課税の最高税率は40%(外、震災付加税2.1%)なので、税負担の所得逆進性はアメリカよりも激しい、と言えます。
 いま、増税論議が盛んになっており、高所得者への課税強化が推し進められていますが、税構造が生み出している歪みこそ先に解消すべきです。二元的所得税論が一世を風靡していましたが、そろそろ転換点に来ているのかもしれません。



吾輩のような金持ちにはもっと課税してもいいのに
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「資産課税重税路線への布石」

2012/03/22 11:39
韓国のみなし相続財産

 東京税理士界のホームページには韓国の税制を紹介しているページがあり、そこを見ると、韓国にも日本と似たような相続税の制度があることが、わかります。
 ただし、みなし相続財産のところが特異です。相続開始前1年以内に2億ウォン以上、相続開始前2年以内に5億ウォン以上を処分(債務を負担した場合を含む)した財産がある場合で、その使途が説明できない状況にあったら、その使途不明財産は、相続財産とみなされます。


国税庁もねらっている

 平成24年度税制改正大綱の取りまとめの際に、国税庁が相続税版の使途不明金課税案を具申していたとの報道がありました。
 相続開始前の一定期間内に、被相続人の財産を換金したり、被相続人が債務を負担したりして、使途が不明な資金が一定額以上になる場合には、使途不明金を相続人が相続したと推定し、課税価格に算入する、という案のようです。
 韓国相続税制のまったくの引き写しです。従来は、あるべきはずの相続財産がなぜ存在しないのかの最終立証責任は課税サイドにあったわけですから、立証義務を納税者側に転嫁することが目的です。


もう一つの布石も打たれている

 今年の改正予定には、年末時点で国外財産の総額が5000万円を超える者に提出義務を課した国外財産調書制度の創設があります。不提出には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるものです。
 そして、国外財産調書制度創設は、すでに存在している財産債務明細書の改編で、一方を国内版とし他方を国外版とする趣旨による改正です。所得2000万円以上の人に提出が義務付けられている財産債務明細書については、不提出や虚偽記載に対するペナルティーはありませんでしたが、国外版が重い租税刑法で縛られるのに対し国内版もルーズなままではいられないのではないかと危惧されるところです。


税制抜本改革で一網打尽か

 流れをみていると、平成23年度の税制改正大綱で実現できなかった相続税の増税を、平成27年から行うこと予定している税制抜本改革の中に、この使途不明みなし相続財産制や、財産債務明細書の実効性確保のための制度改正などを一気に盛り込もうとしているのではないか、と穿った予測をしたくなってしまいます。



資産捕捉の先は富裕税か・・・
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「振込め詐欺にも税の配慮を」

2012/03/14 05:11
振り込め詐欺ではじめての税務係争

 平成20年中に、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失が雑損控除の対象になるとして、税務署と国税不服審判所で争った人がいました。
 長男と名乗る氏名不詳者から、電話で「勤務先の金を流用したので、穴埋めするための金が必要である」旨のウソを告げられ、電話の相手方が長男本人であり、金を必要としているものと誤信し、郵便局から、電話の相手方が指定した銀行口座に240万円を振込送金し、さらに、翌日と1週間後にも電話でのウソに乗じて260万円及び320万円、合計820万円を振込送金し、その後にだまし取られたことに気付き、警察署に被害届を提出した、と言う事例です。


税務署の主張と審判所の裁決

  「災害」による損失には、本人の意思に基づく行為に依るものは該当せず、「盗難」とは、占有者の意に反する第三者による財物の占有の移転をいうのであり、「横領」とは、財物の委託者と受託者との間に信任関係があることが前提で、振り込め詐欺犯との間にそれがないから、本件が雑損控除の対象となる災害・盗難・横領のどれにも当たらない、と税務署側が主張し、かつまた審判所も同じ判断をしました。


納税者はどう言っていたか

@ 振り込め詐欺は、病んだ現代社会が生み出した「人為による異常な災害」であり、国税庁が雑損控除の対象であるとした耐震強度偽装事件が建物販売会社の詐欺行為(販売)に基因していることと共通面があり、これと同じく取り扱ってもおかしくはない。
A 長男に渡すつもりで振り込んだ金銭について、それだけで所有権の移転がないとすれば、たまたまそれを管理している者が横取りしたのであるから、「横領」に当たる。
B 振り込んだ金銭について、本人の意に反してただちに所有権の移転があるとするなら、それは「盗難」に当たる。


審判所は十分な吟味をしているか

 裁決書を読む限りでは、結論先にありきで、納税者の主張への十分な吟味をしているようには見受けられません。
 社会安寧の確保が国家の義務であるとしたら、新しい犯罪により高齢年金者が狙われることに対し、配慮がもっとあってもよいのではないでしょうか。
 


「振り込め詐欺」は詐欺ではなくて、横領又は盗難であり、人為災害です。
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「次なる巨額還付加算金」

2012/03/11 19:56
武富士事件の場合

 武富士最高裁判決で、国側逆転敗訴の結果、加算税、延滞税を含め1,585億円納付していたものに、約400億円の還付加算金を付して、約2,000億円が還付されました。
還付加算金は国税側からの利子に相当するもので、4%余の利率で計算されることになっており、納税者側の早期納付の場合の軽減ペナルティーとしての利率と同じもので、納税者にも国税側にも、適正申告納付・適正課税執行を促すものとして制度化されているものです。


巨額な申告否認には即納付の納税者

 税務否認を受けると、延滞税が大きくなることを回避するため、納税者としては速やかな納税をしておくことが通例で、その結果、東京都銀行税事件、旺文社事件、ガイダント事件など税額が巨額な国側敗訴の事例で、それぞれ巨額な還付加算金が発生しています。
 次の巨額還付加算金発生が予測されるのは、武田薬品の移転価格を巡る係争です。
武田薬品のホームページでのニュースリリースによると、更正処分を受けた所得金額は1,223億円、地方税を含めた追徴税額は571億円です。


武田薬品移転価格更正処分事件

 武田薬品からアメリカの同社子会社への製品供給価格が低すぎるとして、大阪国税局が2006年6月28日に更正処分をしたことに対し、異議申し立てをするとともに、日米二重課税の解消を目的として、国税庁に対し、米国との相互協議申し立てもしていたところでした。
 2011年11月04日の武田薬品のニュースリリースで、国税庁より米国との相互協議が合意に至らず終了した旨の通知がこの日にあったと報じられました。


国内係争の再開

 相互協議決裂の結果、一旦中断していた国税局への異議申し立て手続きが再開しているので、遠からず異議決定が出ると予想されます。アメリカ政府を説得できないまま、国内法人への二重課税を強行することは考えられません。
 納付から、すでに5年半経過しているので、武富士事件の3分の1程度の規模ながら、約150億円の還付加算金の発生となる可能性は大きいと言えます。



法人住民税事業税の還付加算金には自治体も頭が痛い
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「総額主義というテクニック」

2012/03/06 03:58
何度でも更正処分ができるが

 法律の建前では、何度でも更正の請求や更正処分ができることになっています。但し、期間制限の範囲内ということなので、従来は、更正の請求期限が1年と短期だったことから、何度もの更正の請求はありえなかったし、それに対応する更正処分が何度も行われるということは滅多にないことでした。
 ただし、昨年12月の法改正で、その期間が最低5年に延びたので、建前だけでなく、何度もの更正の請求や更正処分が現実味を帯びるようになってきました。


更正処分の効果と判決の効果

 税務署長の更正処分は、過去の申告や更正・決定を白紙にもどした上で、あらためて税額を全体として確定しなおす行為である、と言われており、これを“総額主義”の効果といい、そして、新たな更正処分がなされると、過去の申告や更正・決定の効力はそこまでで消滅し、新たな更正処分のみが法律効果を持つ事になり、これを“吸収説”の効果といいます。
 ところで、税務訴訟での判決も、同じように、総額主義的に税額全体を確定し直し、吸収説的に過去の申告・更正・決定の効果を消滅させる効果をもちます。ただし、判決が確定すると、期間制限内ではあっても、それ以上の更正の請求や更正処分ができなくなり、最終的な確定となります。
 ちなみに、不服申立てでの異議決定や裁決は税務当局を拘束する効果はあるのですが、判決とは異なり、再更正処分を強制する効果に過ぎず、別な事案であれば、再々更正処分が可能で、最終的な確定とはなりません。


アンタッチャブルにする効果

 「最終的な確定」すなわち、それ以上の更正処分が有り得なくなる、という法的効果を得るためには、税務訴訟にして確定させればよいわけです。
 申告内容に、当局と大きく揉めそうな問題点(例えば移転価格税制など)を含んでいるとした場合、小さな問題で更正の請求をして、減額更正しない処分を出させて、不服申立てをすることになれば、訴訟の勝ち負けに拘わらず、訴訟が終わったところで、最終確定となり、揉めそうな問題点が当局にとっていつの間にかアンタッチャブルとなってしまいます。
 期間制限の延長効果と総額主義の法的効果が交錯するところには、税務行政を翻弄させる新しいテクニックが生まれそうです。



総額主義・吸収説は従来は当局有利の見解だったが、・・・
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「修正申告しても争える」

2012/02/29 23:13
争えないという理由

 「修正申告をすると争えない」と言われることが多いのですが、それは修正申告が自らその税額を確定する行為だから、ということに由来するものではありません。
 当初申告をして、さらに修正申告をして、その後、減額更正の請求をして、税務署長により減額更正処分が拒否されたら、当然に争えます。
 「争えない」と一般に言われる理由は、更正の請求に期間制限があり、期間が経過してしまっていることが多いからです。


不条理の制度欠陥の典型例

 所得税や法人税の事案で、買換え等をめぐり修正申告が義務付けられていて、これを故意に過怠すると「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」に処されることになります。
 もし、税務係争中だったら、修正申告書を提出すると、係争の対象の申告や処分が修正申告に吸収され消滅し、「訴えの利益」がないとして原告適格を喪失し、争う資格を失います。
 ただし、修正申告後直ちに更正の請求を出せる期間的余裕があれば、振り出しには戻りますが、争いを続けることはできます。
 場合によっては、裁判所の指揮の下での審理の併合や訴えの変更が可能かもしれません。
 しかし、大抵の場合は、罰を受けたくないとして修正申告書を提出したが最後、更正の請求のできる期間はとっくに経過していて、係争の継続は不可能ということになります。


23年12月改正による解決

 12月2日公布の改正税法によると、更正の請求期間は5年(贈与税及び移転価格税制に係る法人税については6年、法人税の純損失等の金額に係るものは9年)に延長されました。
 改正前の期間制限は1年でした。この圧倒的な短さが、「修正申告をすると争えない」ことの元凶だったのですが、5年に延びたことにより、争いの継続・開始が実質的に可能になりました。
 相続の分割の確定により、相続税の修正申告・更正の請求をすることになる場合も、当局と係争中の場合には不条理な結末をもたらしていました。ウッカリ修正での悲劇のドラマもありました。これらの不条理・悲劇も12月改正で相当程度に解決されたと言えます。


裁判長!! 総額主義ではなく争点主義で、吸収説ではなく併存説で判決して下さい。
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「確認的規定としての改正税法」

2012/02/28 23:07
予測に反して確認規定になった その1

 個人の受け取る保険金が、会社契約で、保険料の半分が会社負担であった場合、個人の一時所得の計算上、その会社負担保険料を必要経費として控除できるか、否か?
この問題での訴訟で、国の敗訴が濃厚だったので、平成23年度12月税制改正で、会社負担分は控除不可と政令を変えました。
 しかし、予想に反して、最高裁では逆転勝訴になったので、不必要な政令改正をしたことになりましたので、改正は新たな意味を持つことのない確認規定を設けたことになりました。


更なる敗訴の前の確認的税法規改正その2

 「記載された金額を限度とする」との税法規定は、所得税法の外国税額控除、地方税法の利子割額控除、法人税法の受取配当等益金不算入、寄附金損金不算入、所得税額控除、外国税額控除等々にあります。
この規定を硬直的に解釈せずに、本来なら記載したであろう金額、でよいのではないか、というテーマでの訴訟が起き、最高裁はたてつづけに硬直解釈を排し、「記載された」の規定を「記載すべきであった」の意味に解する判決を出しました。
 これで、「記載限度額要件」とか「当初申告要件」とか言われる規定は、悉く意味を持たないことになりました。
例えば、後から、みなし配当や寄附金の認定を受けたとかという場合でも、「記載限度額要件」とか「当初申告要件」により、益金不算入や損金算入が不可とされても、訴訟に至れば救済されることになりました。


確認規定を超えた見直し

 平成23年度12月税制改正では、これらの訴訟の結果を承けてのことながら、相続税や贈与税の配偶者の控除規定にまで及ぶ「記載限度額要件」と「当初申告要件」の廃止に近い見直しが行われました。
 措置法関係の規定と、減価償却や引当金などの規定を除いては、徹底した見直しになっています。
 なお、平成23年12月改正の解説では、「当初申告要件」と「記載限度額要件」に係る改正の適用開始につき、改正法公布後のこととしているものが多いけれど、この改正も全部ではないものの、中心部分は訴訟で解釈が変更されたことを確認することを規定化したものなので、公布日以前の申告にも適用があるものが多い、と言えます。


「当初申告要件」や「記載限度額要件」で次々と潰される訴訟に当局は疲れたんだね。
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「保険料支出と負担」

2012/02/25 12:00
負担していない保険料の控除可否

 養老保険の満期がきたので、満期保険金を受け取り、確定申告をした人がいます。個人が受取った満期保険金は、一時所得として所得税・住民税の課税を受けることになります。一時所得では「収入を得るために支出した金額」は必要経費となります。
その保険が会社契約で、保険料の半分が会社負担であった場合、個人の一時所得の計算上、その会社負担保険料を必要経費として控除できるか、否か? どちらか?


税務署と納税者の主張

 この疑問をめぐる税務訴訟がありました。税務署は、一時所得の計算上控除されるのは、本人が負担した保険料と給与課税された保険料に限られ、本人が負担していない保険料を控除することはできない、との解釈論を展開しました。
 納税者は、法律の規定では、誰が支出したかは問うていないから、会社負担でも控除できるはずで、税法通達にもその旨書いてある、と主張しました。


地最と高裁の判決

 理論的には、税務署の言う通りであるが、法律政令通達は、その理論通りの規定になっておらず、会社負担保険料を控除できないものと読みとることはできない、として納税者の主張を認めました。


最高裁の逆転判決

 訴訟での負けを予測して、国税庁は、平成23年度税制改正で、会社負担分は控除不可と政令を変えたところでした。
 ところが一転して、最高裁は、一時所得の必要経費たる「支出した金額」とは、個人の担税力を図る趣旨のものであるから、収入を得た個人が自ら負担したものに限る、との解釈で納税者敗訴としました。
 文理解釈で判決していた地裁・高裁とは異なり、最高裁は趣旨解釈での判決にしました。政令改正は不必要だった訳です。


予測可能性を許さない最高裁

 この最高裁判決を下した裁判官は、武富士贈与税回避事件、損益通算禁止遡及適用違憲事件の最高裁判決と同一人です。
 武富士事件では、趣旨解釈することを拒否して、国外長期滞在が贈与税回避目的であったとしても、法の解釈には限界があり、立法的対処しかない、としていました。
 判決ごとに最高裁の姿勢が異なり、多分、当局側も最高裁判決は予測困難さを増幅していると見ているのではないでしょうか。


  最高裁判決には、予測がつきにくいものがおおくなったな
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「雑損控除での人為災害」

2012/02/21 13:05
雑損控除の対象事由
 
 雑損控除の損害の原因は、次のいずれかの場合に限られます。
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
(4) 盗難  (5) 横領

人為による異常な災害の事例・姉歯事件

 構造計算書偽装の姉歯事件の被害物件である分譲マンション居住者に対しは、所得税・個人住民税について雑損控除が適用できることとされています。
 政府が入居者に対し自主退去の勧告や使用禁止命令等を行ったこと、検査機関が見過ごしたこと、居住者が偽装に気付くことは極めて困難、などの諸般の事情を考慮して、「人為による異常な災害」に該当すると判断されました。


ラジウム撤去処分費用は?

 東京都世田谷区で相次いで発見された“出所不明”のラジウム入りの瓶、社団法人「日本アイソトープ協会」が一時的に預かっているということらしいが、撤去や処分に、場合によっては数千万円もの費用がかかる恐れがあるといわれています。
 もし個人負担があるとしたら多分、人為による異常な災害損失になるのでしょう。


アスベスト除去費用は?

 アスベスト使用に係る建築規制は平成18年からで、また大気汚染防止法は古い建物を解体するに際しての周辺への飛散や解体労働者の曝露を防止するべく、平成8年以降規制が強化されてきました。
 その結果、アスベスト使用物件と認定されると、アスベスト除去には、特別な申請等の手続き、専門の業者による工事・検査が必要となり、通常解体費の倍近い費用が追加でかかるようになっています。
 このアスベスト除去費用は人為による異常な災害損失に該当するでしょうか。

訴訟になっているアスベスト災害

 アスベスト除去費用を雑損控除の対象として所得税の申告をした事例があります。
税務署の容認するところとならず、現在訴訟中ですが、地裁では納税者敗訴となり、高裁で争っています。
 構造計算書偽装の姉歯事件との比較において判断すると、容認の余地があるようにも思えます。

アスベスト除去費は予定外の異常な出費だった



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「消費税増税&交付国債」

2012/02/14 20:42
功を奏するか正面突破作戦

 「政局より大局」と大見得を切って、政界ではタブーとも言える消費税増税を一枚看板にした野田政権の正面突破作戦は予想外であっただけに新鮮味もありました。
 ねじれ国会の乗り切り作戦に、打つ手がないことの裏返しに過ぎないものの、捨て身で掛かられると、「大局という政局」に周囲が翻弄されることになりますが、「小泉郵政解散の再現」のような劇的な幕切れには多分ならないでしょう。


消費税増税ありきの周辺税制

 消費税は、この現代日本の最も国民的な民主主義を体現した税であり、かつて消費税を制しきった政党・政治家はいなかった、と言えます。
 すでに先の政権時より、大衆課税への抵抗感を緩和するための外堀を埋める施策としての、高所得者への増税、資産税の増税のレールは敷かれつつありました。
 昨年末には、基礎年金の国庫負担分2.6兆円の財源が交付国債で賄われることになり、この交付国債は近い将来の増税消費税によって償還される、と決まりました。
 消費税増税による、所得逆進化の昂進への当面の対策として、低所得層への現金給付の検討にも入っています。
消費税増税へのロードマップは完成しつつあります。しかし、まだまだ大きな波乱が待ち受けているのかもしれません。


交付国債って何だ?

 2015年までに消費税10%が実現しても、2020年のプライマリーバランスの赤字は9〜16兆円強に上ると政府は明言しています。
 ところで、交付国債はこのプライマリーバランスに直接には関与しません。なぜなら、交付国債は、政府が現金を支払う代わりに公的機関向けなどに発行、交付する無利子国債で、「小切手」のようなもので、発行を受けた機関などは、必要なときに国に請求すれば換金でき、国にとっては、請求があるまでは現金を必要としないため、当初は予算に計上する必要がなく、新規発行国債にも含まれない、ものだからです。
 財政の究極の奥の手で、打ち出の小槌とも評されています。もし、「小切手」類似としての流通性か確保されたら、償還の必要もない、事実上の政府紙幣、戦前の軍票のようなものになってしまいます。
 


これは今度流通するようになった交付国債です。インフレを呼び込んでくる切り札です。
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「最高裁二重課税判決 土地譲渡ではどうなる?」

2012/02/04 10:30
やはり起きていた税務係争

 平成19年に相続がおき、相続税申告では3198万円余で評価した土地を、平成21年に3000万円で譲渡した事例があります。
 これについて納税者が、相続税で時価課税済みなのだから、譲渡所得税が課税されるとしたら二重課税ではないか、と問うて国税不服審判所に審査請求しています。
審判所は、法律で課税を容認しているとして、訴えを棄却しています。


前提としての二重課税違法判決

 所得税法の非課税規定として、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」が挙げられており、最高裁は、平成22年7月6日の判決で、これは 「相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除する趣旨の規定である」、との見解を表明しました。
この判決で争ったのは、相続課税された年金保険をその後の各年で年金受給したときの所得税の非課税でした。


審判所は荷が重すぎるとして逃げの一手

 審判所は、最高裁の二重課税判決は、生保年金所得に限ってのものである、としてサッと切り捨てています。
 相続課税と譲渡所得課税は明らかに二重課税なのですが、これを深く採り上げて論じようとはしていません。裁判所で結論を出してもらってよ、という姿勢です。


最高裁判決の射程範囲はどこまで及ぶ

 最高裁判決を承けて、昨年の税制改正で、被相続人に生じている未実現の利子や配当等は、実現した段階で相続人に二重課税されるという新規定が挿入されることになりました。譲渡所得などのように二重課税が明文化されたわけです。
 すくなくとも、最高裁判決の射程範囲が生保年金所得に限られるものではなかったことは税務当局も理解しているわけです。
 しかし、二重課税を明文化した規定と、二重課税排除規定とが所得税法にそのまま並存する場合、二重課税排除規定を無視するのが正しい法解釈なのか、問題は残ったままです。


最高裁的解決方法は両立だった

 相続税の課税部分を超過する場合にのみ所得課税を容認する、というのが最高裁の判決内容でした。
 その最高裁見解が、生保年金だけでなく、譲渡所得にも当て嵌まる、となるのかどうか、税理士としては大きな関心のあるところです。


裁判所はどこまで徹することができるか!!
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「2012年度税制改正大綱 税制抜本改革の錦の御旗」

2012/01/13 08:13
税制抜本改革の先行措置

 2012年度税制改正大綱には、「税制抜本改革」という言葉が何度も出てきます。大綱によると、その抜本改革の一部は2011年度に先行措置として改正案とされていたようです。ただし、国会通過がままならず、積み残しが発生したとしています。
 積み残しの一部である給与所得控除や退職所得2分の1課税については2012年度改正案として国会に再提案されます。積み残しの残りのものである、相続税・贈与税の改正は「税制抜本改革における実現を目指す」としています。


税制抜本改革とは何か

 大綱には、「所得課税、法人課税、消費課税、資産課税の全般にわたる税制抜本改革」とか、「消費税を含む税制抜本改革」とか、という表現が出てきます。
 ニュアンスとしては、消費税の税率アップを実現することが税制抜本改革の本丸のような印象を受けます。
 また他方で、「社会保障と税の一体改革」との表現もあり、消費税と社会保障費のリンクが目的のように思われます。


税制抜本改革をすることの決まり

 ところで、大綱の、税制抜本改革をすることは当然の大前提という口ぶり、はどこから出てくるのでしょうか。
 そう考えながら大綱を読んでいくと、「平成21 年度税制改正法附則104 条に示された道筋」と言う言葉が強調されていることに気付きます。税制抜本改革の錦の御旗はここにありそうです。


法附則104 条

 税制改正法は各税法の改正部分を一括して条文化しているので、改正後は各個別税法に異動し、その一括法には何も残らないのが通常です。
 ところが、「平成21 年度税制改正法附則104 条」は、それらと異なり特殊で、異動していく個別税法がありません。改正一括法にポツンと残っている規定です。
 そこに、社会保障給付の財源措置として「2010年代の半ばまでに持続可能な財政構造を確立する」ために、各個別税法の抜本的改革をする旨の宣言的規定がありました。
 自民・公明政権時代に作った規定だからこそ、ねじれ国会時代の錦の御旗になるのかもしれません。

「錦の御旗」
その行為や主張を正当化し、権威づけるもの。
(三省堂 大辞林)

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「2012年度税制改正大綱 2番煎じが目玉」

2012/01/11 23:08
マスコミにみる今年の大綱

 12月10日、2012年度税制改正大綱が公表されました。消費税増税を控えて場当たり的とか、小粒な内容とか、政策理念がないとか、マスコミ評価は惨憺たる状況です。
自動車重量税の軽減が取り沙汰されていることの外は、目立つ形で取り上げられていません。
むしろ、この税制改正案が、今年もまた、まともな国会通過を果たせないのではないかと心配になってしまいます。


大綱の拾い読み

 税理士の目から注目される制度改正をピックアップしてみます。
@給与所得控除の見直し
A退職所得課税の見直し
B住宅取得資金贈与の非課税枠拡充
 この@とAは昨年の改正予定で積み残しとなったものなので、2番煎じです。同じく積み残しの相続税増税・「納税者権利憲章」策定などは姿を消しています。Bは今年のささやかな目玉です。


給与所得控除の見直し

イ 給与所得控除の上限設定
給与収入が1,500 万円を超える場合の給与所得控除額については、245 万円の上限が設けられます。
ロ 特定支出控除の見直し
〇弁護士、公認会計士、税理士などの士業資格の取得費が特定支出の範囲に追加され、図書費、衣服費及び交際費等の「勤務必要経費」も、特定支出の範囲に追加されます。
〇給与所得控除の2分の1の額も特定支出の範囲に追加されます。


退職所得課税の見直し

 役員等としての勤続年数5年以下の者が受ける「役員退職手当等」については、2分の1課税の措置が廃止されます。
「役員等」には、通常の法人役員のほか、国会議員及び地方議会議員、国家公務員及び地方公務員が含まれます。


住宅取得資金贈与の非課税枠拡充

 平成23年までの非課税贈与枠を、事後3年に亘り漸減しながら延長するとともに、優良住宅向け特別拡充枠が設けられました。
 23年の1000万円枠は24年まで延長し、その後25年は700万円、26年は500万円と漸減します。ただし、省エネ・耐震住宅取得資金の場合は、24年1,500万円、25年1,200万円、26年1,000万円です。
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「2012年度税制改正大綱 国外財産調書制度」

2012/01/10 01:26
海外への資産逃避による申告漏れ対策

 2012年度税制改正大綱は、国外財産に係る所得や相続財産の申告漏れが近年増加傾向にあること等を踏まえ、一定額を超える国外財産を保有する個人に対し、その保有する国外財産に係る調書の提出を求める制度を創設する、としています。


対象者は中流上層以上の資産家か

 対象者は、年末時点で国外財産の総額が5千万円を超える居住者であって、提出する「国外財産調書」には、財産の種類、数量及び価額などを記載し、翌年3月15 日までに、税務署長に提出する、と言うことのようです。
 所得税、相続税の申告漏れを捕捉することが目的とされてはいますが、提出期限から判断して、所得税法に規定が置かれるものと推測されます。


所得の有無とは無関係な申告

 所得税法に規定が置かれるとしても、この「調書」は所得の有無とは無関係に提出義務が生じます。
 所得税法では、合計所得金額が2千万円超の者への「財産債務明細書」の提出を義務付けていますが、新設予定の「国外財産調書」の提出義務者には所得要件がありません。所得税の確定申告書の提出義務がなくても、調書提出だけが必要になることもあり得ます。


財産申告という新しい可罰制度

 従来からあった「財産債務明細書」の提出という財産申告には、不提出や虚偽記載に対するペナルティーはありませんでしたが、「国外財産調書」の提出という財産申告には、1年以下の懲役又は50 万円以下の罰金が法定されます。
 また、国外財産に係る所得があるのに国外財産調書不提出の場合、その所得部分についての無申告加算税・過少申告加算税には、5%が追加重課されます。


日本版富裕税への布石か

 「小富豪」向けに、海外への資産移転を煽り、その知識やテクニックを案内するオフショア勧誘情報が目につく昨今、いわゆる「資産フライト」が広く浸透し出したことへの対抗策なのでしょうが、さらにその先に国内財産への財産申告にも同じような厳罰をもって臨む制度化を目論んで、それへの布石だとすると、いよいよ日本版富裕税への準備かと思ってしまいます。


パーマネントトラベラーを夢見ているのだけれど・・
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「民間給与実態と景況」

2011/12/13 20:49
給与所得者の総数と給与総額の回復

 この9月16日国税庁公表の2010年分給与実態統計データによると、民間給与所得者数は、5,415 万人(公務員を含めた総数は約5,800万人)で、前年より27万人(0.5%)増加しています。給与総額は194兆3,722 億円で、前年より1兆8,980億円(1.0%)増加しています。


平均給与の回復の実態

 民間給与所得者の平均給与は、412万円で、前年より6万1千円(1.5%)増加しています。3年ぶりの増加ですが、前年の09年分の下落幅23万7千円(5.5%減)は1949年の同統計開始以来最大だったので、2010年分の412万円は増加に転じはしたものの、ここ10年では09年分に続く2番目に低い金額です。


源泉所得税にみえる下半期回復の様相

 民間給与に係る源泉徴収所得税額は7 兆5,009億円で、前年より697億円(0.9%)減でした。
この10月11日国税庁公表の法人申告事績報告は半年遅いデータなのですが、給与所得に係る源泉所得税の税収は8 兆6,389億円で、前年より687億円(0.8%)増でした。2011年に入ってから減が増に急転しているようです。
景気回復の足取りがしり上がり基調になっているように見受けられます。


業種別平均給与

 業種別にみると、最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の696 万円(前年630万円、前々年675万円)、次いで金融・保険業の589 万円(前年625万円、前々年649万円)となっており、最も低いのは宿泊業,飲食サービス業の247 万円(前年241万円、前々年250万円)です。
 東電をはじめとする、原価プラス利益で販売価格を定める、電気・ガス・水道など公営的非競争独占企業の平均給与がダントツに高く、伸び(対前年66万円増)も大きく、新規参入しやすい飲食サービス業の年額で3倍近く、伸び(対前年6万円増)で11倍にもなっています。
 法律によって守られ、景気変動に左右されない企業が過剰に保護されている印象があります。


給与の上昇期に入ったのかしら
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「過去最低でも回復基調」

2011/12/12 20:25
3年連続で過去最低 黒字申告は25%

 国税庁が発表した2010事務年度の法人税の申告事績によると、今年6月末現在の法人数は前年度比0.7%(2万法人)減の297万8千法人で、うち今年7月までの1年間に申告したのは、前年度比0.9%(2万4千法人)減の276万2千法人でした。
 法人の黒字申告割合は25.2%と、前年度比で0.3ポイント減少しています。初めて30%を割り込んだ2008年度から3年連続で過去最低を更新しています。
 ちなみに、法人の黒字申告割合の過去最高は1973年度(65.4%)です。


実態は景気回復基調の増データ

 新聞には上記の悪い指標が躍っていましたが、統計値をみると、法人の申告所得金額は前年度比7.0%(2兆3526億円)増の36兆1836億円、申告税額の総額も前年度比7.5%(6560億円)増の9兆3856億円と、ともに7%程度増加しています。
 4年ぶりのことです。企業業績は回復基調にあり、赤字法人は減っています。黒字申告法人が少ないのは、相殺できる繰越欠損金が残っているからです。


税務申告に見る景気回復基調の実相

 黒字法人の申告所得金額は、黒字申告1件当たり、前年度比9.1%増の5,192万円です。申告欠損金額は、前年度比23.6%減の20兆8,969億円と大幅に減少しています。
 赤字申告1件あたりの欠損金額も同23.3%減の1,012万円となっています。
 ちなみに、申告所得金額の過去最高は2006年度の57兆828億円、申告欠損金額の過去最高は2002年度の33兆116億円です。


源泉所得税収納額にも増データ

 2010事務年度における源泉所得税額は12兆5597億円で、前年度比2.1%(2624億円)増と、これも4年ぶりに増加しています。
 主に給与所得の税額が前年度比0.8%増の8兆6389億円、配当所得が前年度比18.0%増の1兆6701億円と増加したことによるものです。
 給与所得や配当所得の増がもたらされているのは、法人所得の伸びの結果です。景気回復の足音が近づいている気配を感じます。


インフレ忌避よりデフレ克服に注力して欲しい
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「ねじれ国会時代の税制改正」

2011/12/03 13:53
税制改正の政局化から学ぶこと

今年の税制改正のうち、政府の目玉としていた改正税法は、半分ぐらいしか国会通過の見通しがありません。3月の時点で、自民党・公明党の3ヶ月つなぎ法によって辛うじて日切れを刹那的に回避したものの、6月の時点で同じようなつなぎ法だったら、そこに入っていなかった電子申告控除やバリヤフリー改修控除、森林計画特別控除は税制として消滅することになっていました。
最早、納税者有利規定といえども、遡及適用立法は、制度廃止のリスクを伴っていることを見過ごすことは出来ません。


平成24年度税制改正の行方

来たる平成24年度は、措置法の期限切れに絡む期限延長改正項目がけたたましく多い年で、税制改正が再び政局がらみの対決の様相を帯びると、消滅する税制や適用困難な税制が続出しかねません。


納税者不利規定で遡及適用不可のもの

 納税者不利規定には、交際費課税、使途秘匿金課税、繰戻し還付不適用規定があります。遅れて国会通過となり、日切れ現象が起きた場合には、交際費課税は、日切れ期間に開始する事業年度に適用不可となります。日切れ期間内に支出するものには使途秘匿金課税はありません。日切れ期間内に終了する事業年度には、繰戻還付停止規定は働きません。


平成23年12月31日で日切れのもの

 居住用財産に係る買換え、損益通算、繰越控除、長期優良住宅の特別控除、10年超保有事業用資産の交換・買換特例、住宅取得等資金贈与の非課税、住宅取得等資金贈与の相続時精算課税、その他の規定が、今年の12月31日で期限切れです。
今年の自民・公明の単純つなぎ法では3月31日期限のものは繋がれましたが、前年末のものは無視されました。同じパターンが繰り返されると、これらは消滅の危機に瀕することになります。


平成24年3月31日で日切れのもの

 期限立法の多くが3月31日期限で、その多くが納税者有利規定なので、遅れた国会通過でも、遡及適用は可能です。
 もし、政府が日切れのまま廃止予定にすることにしている法律があるとして、それが試験研究費や教育訓練費などのような事業年度開始規定のものの場合、単純つなぎ法で繋がれてしまうと、つなぎ期間に開始している事業年度には廃止効果がないことになります。
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「借地買戻しで不合理な結果」

2011/12/02 09:59
通達の借地権理論

 土地所有者である地主が、更地価格1億円の土地について、借地権を立退料6000万円を支払って買い戻して、更に、その借地権を他人に6000万円で借地再設定すると、 借地権の取得費も新規設定収入も共に6000万円なので
6000−6000=0 となるように思えます。
 しかし、ここの計算は、
6000−6000×0.6−6000×0.05=2100
(土地は先祖伝来のもので取得費不明、旧借地権は自然発生なのでかつて借地権の譲渡計算はしていない、という前提)となるような算式が、通達に書いてあります。


逐条解説では通達を否定

 ところが、この通達を解説する本には、「このような事例にあっては、法形式上は旧借地権の消滅、新借地権の設定という手順を踏んだことになるが、その経済的実質は、旧借地権者から新借地権者への借地権の移転とみることができ、その借地権の内容には何ら変更がないと解する余地が多分にあるにもかかわらず、この通達をそのまま適用して前述の算式に従って計算することにより課税される所得が発生することになろう。そこで、このような事例については、この通達を形式的に適用するのは必ずしも適当でないので、取引実態に即して、すなわち、地主にとって現実的な収入金額がない限り、その借地権取引によってその地主に所得が発生したと無理に考える必要はないであろう。」と述べて、通達の計算結果を否定し、 6000−6000=0 でよいとしています。


例外扱いでお茶を濁さず原理的再検討を

 神は細部に宿るのであり、細部の事例に適用して、合理的な結果を得られない通達の考え方は、原理的に誤っているのだと思われます。
 借地権と底地権が同一人に帰属したら、必ず混同処理しなければならない、と考えなくてもよいのではないでしょうか。借地権を底地から分離したら、それをそのまま維持しても、特に不都合はないように思われます。
 一度、借地と底地に分離した事のある土地は、その記憶・記録が明確な限り、同一人に借地と底地が帰属することになった後でも、別々な財産として、取得費の計算をするものとする方が、合理的な気がします。


借地を買い戻してすぐ借地にするんです
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「1円ストックオプションが主流に」

2011/11/29 20:39
1円ストックオプションの世界傾向

 株式報酬型役員退職金の性格の1円ストックオプションがアメリカで急増している、と10月7日の日経新聞が報じていました。
 ストックオプション(新株予約権)は、日本では、1997年に解禁され、1円ストックオプションの税制が明確になったのが2003〜2004年でした。日本での1円ストックオプションは、2007〜2008年に急増期があり、現在も少しづつ増えており、それに比して、通常型のストックオプションは減少傾向にあり、両者の比率は現在半々のようです。


非適格なれど退職所得税制適格

 上場企業では、役員報酬の開示が進んだことなどで、算定基準の不透明な退職慰労金を廃止するのが大勢で、その受け皿が1円ストップオクションだった訳です。退職慰労金だと自ずと年功色が強くなりがちなところ、1円ストックオプションだと成果重視の業績連動報酬制度の色が強くなる傾向にあるようです。
 一般に、権利行使期間は割当日から30年以内というように長期で、かつ取締役を退任した翌日から10日間などの行使条件がつけられています。
 1円行使価額という設定では、売却時の10%株式譲渡所得課税という税制適格ストックオプションには該当しませんが、退職所得課税の対象となります。


権利付与時の課税はなし

 ストックオプションは、登記されることになっているとともに、一般には、新株予約権証券が交付され、譲渡も可能とされています。
 ただし、1円ストックオプションの場合は、権利行使価額がほとんど無償での利益供与であるとともに、証券の交付がなく、譲渡制限がついていて、権利行使可能期間が極端に短い形成権であることを踏まえて、権利付与時の課税なしとされています。
 権利付与時での利益への不課税は算定の困難さとともに、未確定未実現所得への課税を税制が忌避しているからで、日航株の無価値化とか、1円になってしまった武富士株とか、9割も減した東電株などを見るにつけ、意味が再認識されます。


我が社でも、1円ストック・オプションの導入を検討してみましょう。
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「世界企業に非課税助成金」

2011/11/25 01:45
カルロス・ゴーンさんの会社移転

 日産自動車は平成21年8月に、長らく本社のあった東京・東銀座から横浜駅東口のそごうデパートと橋をはさんだ「横浜みなとみらい21地区」66街区に移転し、日産グローバル本社(登記簿上の本店は、横浜市神奈川区の横浜工場)としました。


神奈川県と横浜市が助成金支給

 この本社立地にあたり、神奈川県は、県外から県内へ本社機能を移転する「施設整備等助成制度」活用の最初の申請としてこれを受理し、横浜市は、企業立地等促進条例の対象地域内に事業所を賃借して本社等を設置すること、本社の従業者数が一定以上の規模となること、経常利益を一定額以上計上していること、などの要件を満たす法人として助成金支給の認定を与えました。


助成金は非課税ではないか

 これらの助成金に関して、横浜市から東京国税局に対し、非課税助成金に該当するものと解してよいかとの事前照会がありました。東京国税局は、法人税非課税通達の要件に該当すると判定し、平成23年9月8日に文書回答するとともに、それをネット上で公表しました。
 非課税通達とは、法人税基本通達9-5-4のことで、「法人が道府県又は市町村から工場誘致条例又はこれに準ずる条例に基づいて補助金、奨励金等の交付を受けた場合において、当該補助金、奨励金等が実質的に道府県民税及び市町村民税の減免に代えて交付されたものであることが明らかであるときは、当該補助金、奨励金等は、その交付を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入しない」とされています。


金額が巨大で当事者企業が巨大すぎる

 日産自動車の受ける助成金は50億円余で、それ以外にも、野村総合研究所が12億円余の助成金だそうです。
 世界のグローバル企業の誘致なので、何十億円程度の補助金は、その後の税収ですぐ元がとれ、併せて地元住民雇用の増大及び地元企業の事業機会の拡大など、地元経済の活性化に寄与するものとしての効果大との判断で行われているのでしょうが、助成金と言うのは中小企業支援とか、雇用促進とかを対象にするイメージがあるので、どうしても意外性を感じざるを得ません。



 紛らわしいから、減免なら減免手続きにすべきでは!
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「今年の税制改正 通勤手当非課税枠縮減」

2011/11/24 10:49
通勤手当非課税の規定

 通勤手当非課税は所得税法に定めがありますが、無制限非課税ではなく、政令で通勤手当の諸態様に応じた1ヶ月当りの非課税限度額が定められています。
 通勤手当の態様と非課税限度額は次のように大きく4つに分類されます。
@ 通勤定期券の現物支給を受けている場合のその通勤定期券(10万円限度)
A 交通機関利用者の自己負担通勤費の補填として受ける通勤手当(10万円限度)
B 自転車・自動車等利用通勤者が受ける通勤手当(距離別非課税限度額)
C 上のABの両方の利用者が受ける通勤手当(AとBの合計額で10万円限度)


距離別非課税限度額とは

 自転車・自動車等利用通勤者の受ける通勤費については、距離別非課税限度額が次のように定められています。
 片道通勤距離     非課税限度額
2キロメートル未満   なし(全額課税)
10キロメートル未満    4,100円
15キロメートル未満    6,500円
25キロメートル未満    11,300円
35キロメートル未満    16,100円
45キロメートル未満    24,500円


15キロメートル以上の場合の特例廃止

 通勤距離が片道15 キロメートル以上の自転車・自動車等利用通勤者で、交通機関を利用した場合の運賃相当額を通勤手当として受けている場合には、その金額を距離別非課税限度額(10万円限度)とすることが出来ることになっていましたが、今年の税制改正で、この部分が廃止されました。
 この改正は、平成24 年1月1日以後に受けるべき通勤手当について適用されます。

改正要望は国土交通省

 国交省は、交通手段を公共交通機関の利用に選択誘導し、環境負荷の適正化に資する、とともに、マイカー利用者に実費を基準とする額を超えて非課税措置が適用されている歪みがあるので、適正化する、と昨年の税制改正要望に記していました。
 しかし、マイカー利用者の利用実費(燃料費ほか維持費等と車両代)が距離別非課税限度額に満たないという歪みがあるという認識には誤解がありそうです。

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「日米それぞれの「アマゾン税」」

2011/11/20 21:47
「アマゾン税」導入が勢いづいている

 カリフォルニアやテネシーなど米国各州で、インターネット小売業への課税を強化する動きが広がっています。
 各州の州財政の悪化、ネットショッピングの利用拡大が、ウェブサイトを通じて州内で集客する企業に徴税を義務付ける「アマゾン税」と呼ばれる税金の導入の法制化を加速させているのです。
 同業最大手のアマゾン・ドット・コムの場合、売上税(日本の地方消費税に相当)を集めるのは法制上、本社を置くワシントン州などに限られており、ほかの州においては徴収されないので、不公平感が強まっていたところでした。


日本におけるアマゾン事件

 支店、出張所等の事業所、工場、倉庫などをPE(恒久的施設)といい、日本国内にPEを持たない外国法人は日本への申告・納税義務がなく、PEを持つ場合にはすべての国内源泉所得が課税対象となります。
 米国アマゾン・ドット・コムは日本国内にPEを置かないまま日本顧客との売買契約を直接結び、米国で売上を上げているとして、日本への法人税納付義務がないものとしていましたが、東京国税局はアマゾン子会社の日本法人がPE機能を果たしているとして、追徴課税処分をしました。
 アマゾン社は08年度年次報告書でその課税処分を公表しており、それによると、追徴税額は加算税等を含め、約1億1900万ドルで、当時のレートで140億円前後です。
 日米二国間協議が続いている模様です。


消費税では揉めていないのはなぜ

 ネットamazonで書籍を注文しようとすると、価格は消費税込みの額になっています。法人税の納税義務はないとしているのに、消費税の納税義務があることを認めているのでしょうか。
 日米租税条約では消費税は条約の対象税目になっておらず、消費税法の納税義務者は国内で課税取引をする「事業者」としか規定されていないので、外国法人でも、PEがなくても、消費税に関しては納税義務を回避できません。
 回避できるのなら、消費税なしの価格での販売にするところなのでしょうが、そこがまたアメリカ州税の売上税と違う面でもあります。
 


 日本でも、海外からのNet通販全体への影響、及び国内自治体の取り分についての考え方に波紋を呼びそうだ。
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「損税対策を税制要望」

2011/11/17 17:58
厚労省の24年度税制改正要望で

 厚労省は、重点項目の一つとして「社会診療報酬等に係る消費税のあり方の検討」を要望しました。これは、医療機関の仕入れに係る消費税(仮払消費税)のうち、社会保険診療に係るものは非課税用課税仕入れとなるため、この分の仕入税額控除ができず、消費者ではなく、事業者が負担する消費税、いわゆる“損税”の問題が生じているからです。


非課税はありがた迷惑

 消費税は、消費者の手に届く前の長い過程で既に事業者によって仮に納められ、前段階消費税として累積されています。そして、最終消費者の負担する消費税額が国に収納される際に控除されることによって、重複収納にならないようになっています。
 この重複収納排除をしないと、消費者が負担しなかった消費税が国に収納されたままになり、国の消費税収入の総額は課税物件にかかる消費税、即ち消費者の負担した消費税総額を超えることになります。
 非課税売上と言えども、事業者は最終消費者ではないので、前段階消費税を負担すべきいわれはありません。事業者は消費税をただ預かって国に納付するだけの法的社会的責任を持つに過ぎないからです。


医師会だけではない

 厚労省の要望は、医師会の要望を承けて採り上げたものですが、非課税のありがた迷惑は医師会に限られません。介護サービスや住宅貸付ほか多くの非課税事業者全体に共通する問題です。
消費税増税のため今後食品に係る消費税が非課税化されることになどなったら、この問題は限りなく広範なものになり、国の重複収納額も巨大なものになります。
 食品非課税による税収減の9割以上が確実に重複収納されたままになります。


非課税は値上げに通じる

 厚労省と医師会のねらいは、もしかすると、近未来の消費税率改定に照準を定め、診療報酬点数や薬価基準のアップを確保するためなのかもしれません。即ち、自己負担増となる前段階消費税を消費者に価格転嫁する戦略です。
 しかし、他の中小零細の非課税事業者はそのような仕入税額控除不適用分を売上代金に転嫁できる制度的恩恵を受けることなく、泣き寝入りしているだけです。


非課税事業者はみな医師会の主張の後に続くべきです。
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「免税事業者廃止の横やり」

2011/11/15 23:29
会計検査院 消費税免税制度の検討要請

 会計検査院は10月17日、資本金1000万円未満企業の新規事業開始後2年間の消費税納税義務免除制度について、財務省に再検討するよう要請しました。
会計検査院が調査したところによると、売上が3億円を超える企業まで免税となっていたり、設立2年経過後に解散したりする制度乱用のケースもあったようです。

税理士会の建議案

 税理士会は、以前から、消費税の基準期間制度を廃止することを税制建議してきています。
 前々年度を基準期間とする現行制度では、申告年度の課税売上高が多額であっても免税事業者となったり、反対に課税売上高が1,000 万円以下であっても納税義務が生じたりするような不合理な現象が生ずるからです。
 税理士会の案は、基準期間制度を廃止し、申告年度の課税売上実績が1,000 万円を超えていれば課税事業者、1,000 万円以下なら申告自由とすべき、というものです。


馬耳東風だった国税当局

 免税・課税の選択は、常に1年ないし2年先の状況を予測しないと有利不利の判定ができず、そのような判定が必要なのは零細事業者だけなのに、基準期間制度が生む弊害を零細事業者に押しつけて、国税当局はいままで馬耳東風でした。
 そこへ、身内の検査院から、単に税収確保し損なっているとの観点だけで、注文が出たので、何か手を打つ必要に迫られることになりました。


免税制度など無くてよい

 消費税は、二重の意味で、事業者課税の税制です。一つは、消費税の納税義務者は消費者ではなく事業者であること。もう一つは、事業者に国の徴税実務と徴税計算を押し付けて、税務署の下請け機関となることを、罰則をもって強制していることです。
 本来は、消費税の導入に際し、押し付けた国の徴税実務と徴税計算に要する費用を補填すべきだったのです。今からでも、税額控除という形で導入するのが、道理です。
 免税制度など廃止して、すべての事業者に申告義務を負わせても、徴税代行税額控除(月2.5万円、年30万円くらいが妥当)があれば、1000万円以下の売上なら納税額は、多くの場合ゼロになります。




この事務から解放されるなら、免税事業者制度なんかなくていいよ。
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「今年の税制改正 新しい減価償却資産PFI」

2011/11/14 18:21
減価償却資産が一つ増えた

 7月22日改正の法人税法施行令で、「公共施設等運営権」という名の新しい減価償却資産が生まれました。
 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」いわゆるPFI法の改正法が6月1日に公布されたことにより、税制も改正されたからです。


PFIとは

 PFI(Private Finance Initiative)とは、民間事業者に公共施設の運営等を委託することをいい、法律は平成11年7月からあり、前年末時点で,全国で375のPFI事業が実施されています。
 国や地方公共団体の事業コストの削減、質の高い公共サービスの提供、を目指すのが目的であり、図書館や観光施設等の運営のケースが多く、話題性のあったものには、仙台市のスポーツ施設PFI「スポパーク松森」、刑務所PFIの「美祢社会復帰促進センター」「島根あさひ社会復帰促進センター」「喜連川社会復帰促進センター」、病院PFIの「高知医療センター」などがあります。


改正PFI法の内容

 PFIには、民間事業者が自治体等に対してサービス提供をして対価を受け取るタイプと、施設の所有権を公共側に残したまま民間事業者が独立の施設運営権者になるタイプとがあります。今次の改正は、後者の独立運営者タイプのPFIを普及させるための法整備をしたものです。
 公共施設運営権は、自治体等に対価を支払うことで権利取得され、その権利は不動産に準拠する物権とみなされ、法人の合併その他の一般承継、譲渡、滞納処分、強制執行、仮差押え及び仮処分並びに抵当権の目的となります。これらの事項は登記に代わるものとしての「公共施設等運営権登録簿」に登録されます。


新しい無形固定資産

 かくして、運営権は有償取得する独立した財産権なので,無形減価償却資産に該当するものとされ、法定耐用年数は事業の実施に当たり設定した運営権の存続期間、第三者から譲渡された運営権の場合は残りの未経過存続期間とされました。
 なお、消費税の課税売上割合の著しい変動に係る調整対象固定資産の範囲にも「公共施設等運営権」が追加されています。



学校PFIもあるんだって
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「負けてもよいのだ」

2011/11/10 20:19
遡及立法合憲判決の意義

 法律によらなければ課税できないとの憲法原則は、自分の税金がいくらになるのか予測しながら経済選択行動することを保障するためのものであり、予測計算判断を十分にできるようにするための期間こそ確保すべきことを要求するものです。
 翌年施行などのように、公布した法律の熟知までの期間の十分な確保への要求です。
 それを有らぬことか、遡及立法まで合憲とする無謀な最高裁判決が平成23年9月22日にありました。不動産の損益通算廃止立法の遡及適用に係る争訟事案です。
 その無謀さのゆえか、判決には逆に、増幅的な政治的効果が生まれてしまったと言えそうです。


国民の不断努力義務

 憲法は12条で、国民に不断の努力で自由や権利を保持すべきことを要求しています。自由や権利はタナボタで与えられるものではない、と言っているわけです。
 たとえ敗訴になろうとも、信ずるところによって国の誤りを正す。これが、憲法でいう国民の権利保持の不断の努力です。


これからの遡及立法

 今回の最高裁判決で、今後とも遡及立法が許されることになるのか、と言えば、当然ながら、もはやそんなことは今後起きないこと必定です。
 税務訴訟まで起こしてしまった税法改正は、財務省の失敗事例ですから、二度と繰り返えさないでしょう。
 国会での、厳しい追及を避けようとする官僚の学習効果としては十分だからです。


敗訴納税者のさらに大きな貢献

 それだけでなく、今年の税制改正の失敗過程で、納税者有利規定だから遡及適用で誰も文句を言うまい、と高を括っていると、そのまま税法条文が消滅してしまいかねないリスクがあることも学習したはずです。
 電子申告控除やバリヤフリー改修控除、森林計画特別控除は、自民党・公明党の3ヶ月つなぎ法に入っていませんでした。もしかすると、再つなぎ法で収束だったとすると、そのまま消滅してしまう可能性が現実にありました。
 今後は、期限延長にからむ納税者有利規定の遡及適用立法も、安易には行われなくなるのではないでしょうか。



  裁判での勝ち負けだけではない !!
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「最高裁の平衡感覚の異常」

2011/11/09 20:15
最高裁の遡及立法擁護判決

 平成16年の土地建物の譲渡所得と他の所得との損益通算を廃止する税制改正は年初への遡及適用だったことによる、遡及課税が許されるかを争った裁判がいくつも起きていました。
 「租税法規不遡及の原則に違反し違憲無効」とする判決、合憲とする判決がそれぞれあり、最高裁にまで争訟はつづき、平成23年9月22日最後の判決がありました。
 租税法律主義の憲法規定は遡及立法による課税を禁止していない、との判決です。


遡及立法ではないとの理由

 合憲判決によると、所得税は期間税なのだから、納税義務の確定日としての12月31日からすれば遡及には当たらない、と言います。しかし、納税義務の確定日は暦年終了日とは限らず、年中に死亡とか、海外出国の場合は3月31日以前に納税義務が確定してしまいます。理屈が通りません。
 また、不動産取引など一生に1度か2度かのもので、同年中に別な取引をすることなどほとんど有り得ないので、改正法下では、一度の行為時点で納税義務の内容は実質的に確定してしまいます。それを、形式論で歴年末での納税義務確定などと言うのは詭弁です。


遡及立法も許す緊急性があるとの言い草

 適用を4月以降とすることが憚られるほどの緊急の遡及立法の必要性をのべています。それなら、不動産税制の改正のテーマが政府税調の中で議論されたのはこの立法時の2年前で、なぜのんびりしていたのか説明がつきません。
 土地と株式の課税不均衡是正が緊急課題とも言いますが、ゴルフ会員権の譲渡損を総合課税に今なお据え置く不均衡はなぜ放置しているのか? 説明がつきません。
 地価下落防止の緊急性も説いていますが、その年の通常国会提案立法に地価がらみのものは一つもありません。土地需要抑制の為の土地利息必要経費不算入規定も放置したままです。地価対策が焦眉の政治テーマだった事実はありません。


武富士贈与税回避判決と同じ裁判官

 香港に居住地を移して武富士株を贈与するスキームを争った事件の判決では、国側敗訴で、1330億円の還付金とそれへの還付加算金が国の負担となり国庫が枯渇したと言われています。遡及立法違憲事件と同じ裁判官でした。同一人格者の判決とは思えないところです。


違憲判決を出すのは怖いのかな !!
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「自動車課税と国民意識」

2011/10/26 18:54
自動車利用者の税負担感は強い?

 5、6年前のことですが、(社)日本自動車工業会・(社)石油連盟・自動車総連などが「ガソリン税は二重課税」とか「消費税と自動車取得税との二重課税」という内容で広告を出し、税制建議もしていました。
 最近、JAF(日本自動車連盟)が「自動車税制に関するアンケート調査」を行い、自動車ユーザーの97%が自動車関連税を重いと感じている、と報告しています。


JAFアンケートの問題意識

 JAFはアンケート質問の前に問題点の存在を指摘しています。
@自動車の取得段階では消費税と自動車取得税が、さらに保有段階では自動車税と自動車重量税があり、その負担は欧米諸国に比べ約2〜49倍と極めて過重。
A自動車諸税では本来の約2倍もの税率(旧暫定税率)が「当分の間」として維持されている。
B自動車重量税は、道路の整備で利益を受けるからとの趣旨で、道路整備費補填のため創設され、平成21年に一般財源化されたことにより課税根拠を喪失している。
C消費税と自動車取得税は共に5%税率で、取得時の二重併課である。
Dガソリン本体価格にガソリン税がかかり、その合計額にさらに消費税がかかる、という重複課税がある。
E地方では生活の足として自動車が必需品で、自動車への税の過重負荷は地方への過重負荷を意味することになる。


誘導尋問的なスタンスではあるが

 JAFアンケートの設問には、回答を誘導する姿勢がアリアリなので、回答内容がそれに引っ張られるのは当然ながら、その集計結果は日本国民の意識をよく反映しているような印象を受けました。
@自動車への過重負荷には、国の財政が厳しいならやむなし51%、自動車ユーザーは負担力があるから21%、税率が下がると自動車の利用が増え環境に負荷がかかるから20%、と容認派が多数である。
A特定財源から一般財源になったことによる課税根拠喪失には、87%はスジが通らないとしている。
B二重併課、重複課税、地方過重も好ましい課税のあり方ではないとの意見が89%、87%、85%と高率である。


負荷の大少よりスジの通った税制、優しい税制にしてほしい
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「バフェット増税論に思う」

2011/10/25 22:24
バフェット発言を読み解く

 アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、米ニューヨーク・タイムズ紙に「年収100万ドル超の富裕層に即座に増税するべき」、財政赤字削減の負担を分かち合うべきと寄稿し、話題になっています。
 しかし、不思議なことに、バフェット氏の連邦税は、693万8744ドルと巨額ですが、実効税率は17.4%でしかなくて、彼の部下の20人の従業員の誰よりも低い税率なのだそうです。理由は、バフェット氏の所得の種類が株式の配当や譲渡益など15%税率の投資家所得で占められているからのようです。


なぜ部下より低い税負担率

 仮にバフェット氏の投資家所得以外がアメリカ連邦所得税の最高税率は35%に該当するものとして計算すると、
@A×15%+B×35%=$6,938,744
A(A+B)×17.4%=$6,938,744
この@とAの連立方程式を解くと、
A=$35,092,498(88%)
B=$ 4,785,340(12%)
となり、所得の88%が投資家所得であることになります。


バフェット的な人に負担を求める

 アメリカ連邦所得税に低率分離課税がないとして、全部総合課税だったとすると、ほぼ倍の税額を納めることになっていたところです。
 高所得層がより低い層より税の負担率が低い、という現象が起きていることに、バフェット氏は心の痛みを感じての発言をしているのでしょうが、ここから直接に、だから高所得層には富裕税を課すべきであると言うことにはなりません。
 まず提起されているのは、所得に逆進的になっている税の歪みの是正の問題だからです。多くの高所得層は、投資家所得よりも、主には、連邦所得税の最高税率の洗礼を受けている、と思われるからです。


日本について同じように考えると

 この課題は、増税論議が盛んになっている日本の税制について考える場合においても、同じ問題が存在しています。むしろ、日本の場合の投資家所得は上場株式については7%の分離課税税率で、所得税の総合課税の最高税率は40%なので、税負担の所得逆進性はアメリカよりも激しい、と言えます。


この坂道を登るには、同じルールにすべきものがある。
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「やっと施行、倒産防止共済」

2011/10/25 22:22
10月決算法人から利用可

 中小企業倒産防止共済の掛金引き上げの施行日は政令委任になっていましたが、ようやく9月16日この政令が公布され、10月1日施行と定まりました。
 この政令の基となる法律「中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律」は平成22年4月14日の成立です。鳩山内閣のときです。それから1年半、菅内閣を経て野田内閣まで、随分永いこと待たされました。


改正法施行の内容

 改正新法により、毎月20万円以内の掛金を、総額が800万円になるまで積み立てることができます。また加入者は、取引先が倒産した場合に、積み立て掛金総額の10倍の範囲内(最高8千万円まで)で回収困難な売掛債権等の額以内の貸し付けを受けることができます。


毎年240万円の損金算入積立金

 この共済掛金は掛け捨てではありません。それなのに、全額損金(必要経費)になります。1年分前払いの場合には短期前払費用の損金算入の適用もあります。
 得意先倒産リスク管理用積立性保険に加入することを兼ねて、純粋に節税商品としてこれを利用することは可能です。


知っておいてよいこと

 解約は自由です。ただし無利息です。
40ヶ月以上積み立てれば100%戻ります。40ヶ月以内の解約は損をします。
 共済掛金積立額の10倍までの貸し付けを受けても、無利息となっていますが、共済貸付金の10分の1の掛金が没収となるので、全体で10%の利息となります。最長期間7年で返済するとなると、年利2.857%に相当します。


申告に際しての留意点

 掛金の損金(必要経費)算入の適用要件として、明細書の添付が要求されています。法人税の場合は別表十(九)が用意されています。
 また、任意解約による積立金の返還金は益金(収入金額)となるので、解約のタイミングも留意事項と言えます。


小規模共済・中退金の施行は?

 なお、同時期に改正された、小規模企業共済への加入者枠拡大、中小企業退職金共済への加入者枠拡大については平成23年1月より施行されています。


損金算入明細書がないと、損金不可ですよ
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「グループ法人税制 1人で渡る赤信号」

2011/10/22 23:09
赤信号みんなで渡れば怖くない

 有価証券報告書提出会社以外の株式会社は、決算公告が義務付けられていて、官報または日刊新聞紙もしくはインターネットで公告することになっています。
 しかし「赤信号みんなで渡れば怖くない」で、ほとんどの中小株式会社がその義務を無視しています。罰則はあるのですが、発動されたことはありません。


制度誘導しているグループ法人税制

 グループ法人税制では、寄附金の取扱いや、現物分配、会社清算などでの特例の適用は、個人株主の下に複数の兄弟会社があるという形のときには対象になりません。法人同士の親子関係でなければなりません。
 そうすると自ずと、兄弟会社の上に全会社を統括する持株会社を設けて親子関係にするとか、兄弟関係を親子関係に組み替えるとか、ということに制度誘導されていくことになりそうです。


1人で渡るときの赤信号

 持株会社設立や兄弟会社の親子会社化に制度誘導される手法としては、
@ 新設分割をして事業を分社化する
A 株式交換をして完全親子会社になる
B 株式移転により完全親会社を新設する
などが挙げられます。
 ところが、これらの会社分割、株式交換、株式移転をしようとすると、決算公告をきちんとしているか否かが問われます。これらの組織再編行為をするときには、債権者保護手続きとして、官報公告や催告書の送付が義務付けられています。その文書には、決算公告が掲載されている官報や新聞の日付と頁数又はホームページのアドレスを示すということが要求されています。


組織再編の関所は登記手続きという要害

 組織再編行為の場合、債権者保護手続のあと商業登記手続をしますが、登記の添付書面として決算広告とセットになった官報広告及び債権者への催告書が必要です。登記手続きは、組織再編を有効にする不可欠の要件なので、この関所を越えるためには、決算公告を無視し続けるわけにはいかないのです。
 そういうわけで、官報の組織再編公告には、タイミングの遅れた決算公告を一緒にしているものが目に付きます。

1人だけで渡る赤信号では、信号無視を見過ごしてもらえません。
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「文理解釈では規定なし」

2011/10/08 03:13
 税法は侵害規範なので文理解釈に依るべき、とは判例や学説での通説的見解です。


償却費計算規定の文理解釈

 それで、減価償却の規定をみてみると、
第1項で、「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」について規定し、
第2項で、適格分割等による期中移転資産について規定しています。
 すなわち、@期末に在る資産、A適格分割等での期中異動資産、この2つに対してしか規定は存在していないということです。
 そういうことからすると、この2つ以外、@非適格組織再編での期中異動、A期中売買、B期中除却・廃棄、Cその他、の理由での期中異動・期末不在資産については、税法に規定がないということになります。
 これが文理解釈から出てくる結論です。


規定がないものにたいする国の見解

 国税庁は10年前、年度末資産に限定の規定に法改正されて直ぐ、年中の譲渡資産の償却費を必要経費に算入しても差し支えない、と見解を示し、また、この改正に期中譲渡資産の譲渡時までの償却費の計上を否定する趣旨はない、と言っていました。
 グループ法人税制施行時にも、譲渡損益調整資産についての譲渡時点までの「期中償却額」は損金算入となり、譲渡損益調整資産の帳簿価額1,000万円の判定も期中償却額控除後による、としています。


国の見解をどう理解する

この、国の見解に対しては、次のような異なる理解があります。
@ 規定のない期中異動資産に対する償却計上は会計慣行に依ることになり、税法制限はないことになるとの表明。
A 立法趣旨は期末資産と適格組織再編での期中異動資産に限っての償却費損金算入容認規定なのだから、納税者有利な超法規解釈と言うべき。


在野にも多い超法規解釈派

 期中償却はできないとAの立場を原理的に書いて、後の号で「質疑応答事例」などの存在を理由に訂正をしていた税務専門誌もあります。しかし、訂正の真の理由が@から来るのか、Aだからなのか、曖昧です。
 国税庁に超法規解釈の権限はないし、通達立法・解釈立法をするつもりも無いと思われますが、ネットで検索をして出てくる在野の理解としては、意外と、国税庁への不信とも言える超法規解釈派が多いように見受けられます。
 

 国税庁の質疑応答開示を、法令違反の御都合解釈と決めつけている人も多い!!
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「資産形成の賢い方法」

2011/10/06 23:12
資産形成の最初の選択肢

 資産形成と言うと、海外投資信託とか、不動産投資とか、がイメージされるかもしれませんが、その前に税制メリットを享受することから始めるべきです。
 掛金が所得から控除されるものに投資すれば、本来の利回りのほかに税率分のリターンがあることになります。所得税と住民税を合わせて50%の課税になっている人の場合、掛金の50%のリターンですから驚異的です。さらに、人によっては健康保険料の料額にも影響しますので、実質リターンはもっと大きいことになります。


どんなものがあるのか

@国民年金基金
A個人型確定拠出年金
B小規模企業共済
 これらの公的な資産形成の制度の掛金は全額所得控除の対象になります。@の国民年金基金の月々の掛金限度額は68,000円なので年計816,000円です。Aの個人型確定拠出年金も自営の人は同額です。企業年金のないサラリーマンは月々の掛金限度額23,000円、年計276,000円です。Bの小規模企業共済の月々の掛金限度額は70,000円、年計840,000円です。


サラリーマンに朗報の今年の改正

 先の@ABは自営業者、法人役員、企業年金のないサラリーマンが対象ですが、企業年金のあるサラリーマンを対象とした制度改正が最近ありました。企業型確定拠出年金の個人拠出制度、いわゆるマッチング拠出制度の導入です。
 税法改正は平成21年度に済んでいたのですが、肝心の「年金確保支援法」が衆院で店晒し、参院で店晒しとなっていて、なかなか成案に成らなかったところ、この8月4日やっと国会通過、8月10日公布で、来年1月から施行されるに至りました。


マッチング拠出の制度内容

 企業型確定拠出年金の掛金額の上限は年額612,000円(他の企業年金がすでにある場合は半額の306,000千円)で、その月々の掛金の半分以下を従業員が個人拠出できる、というのがマッチング拠出の制度内容です。
 投資効率、投資リスクを考えると、これら既述の公的資産形成の制度上での家計資産運用は、実行していないものがあったらこれをまず優先的に考慮すべきものです。


不動産や株の前にやることが
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「非上場株でも上場株の税率」

2011/10/05 23:06
株式の配当・譲渡課税の原則

 株式の配当所得に対する課税は,非上場株式については国税20%の源泉徴収の上確定申告での総合課税、上場株式については10%(国税7%、地方税3%)の源泉徴収の上、総合課税、申告分離課税、申告不要の選択となるのが原則です。
 株式の譲渡所得も似た制度になっていますが、総合課税は無く、非上場は20%(国税15%、地方税5%)の申告分離のみで源泉徴収はありません。上場株式は配当所得との損益通算が可能で、申告分離課税のほか、10%(国税7%、地方税3%)の源泉徴収の上、申告不要とする選択もでき、譲渡損失が残るときは、損失の繰越しをすることができます。


上場と非上場の限界事例

 都市銀行などに見られるように、株式交換や移転により完全子会社となると、自ずと上場廃止になります。
 ただし、株式交換などでは、その成立に必要な株主総会の承認決議で反対の意思表示をすると、その会社に自分の所有する株式の買取請求ができます。そこで買い取られる株式は自己株式となるので、みなし配当や譲渡損益が発生します。
 この場合、株式の買取請求による価額の確定や対価の支払時期が上場廃止の前後になるので、自ずと上場と非上場の限界事例となります。


限界事例の具体的内容

 株式交換の効力発生は上場廃止の3日後とされており、株式の買取価格は、反対株主と会社との間に協議が調ったときはその価格となり、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、その期間の満了の日後30日以内に裁判所に申立てをして、裁判所で決定することになります。
 国税庁のホームページをみると、実際に起きている、株式交換、上場廃止、買取請求の事例の課税関係に係る大阪国税局の事前照会回答が掲載されています。


税率は非上場でも上場と同じ扱いでよい

 株式交換の公告時点、総会決議時点、買取請求時点、上場最終日の全てで株主であったならば、配当所得・譲渡所得の発生日が上場廃止後になったとしても、上場株式等に係る所得と取り扱う、というのが大阪国税局文書回答の内容です。
 ただし、配当所得と譲渡損失の通算や、株式譲渡損失の繰越控除の規定まで上場扱いでよいとは、言及していません。


上場と非上場では扱いが全く違うが、 税率のところだけは融通がきくのかな!
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「みなし配当にならない自己株取得」

2011/10/04 20:14
自己株式取得の税務処理の原則

 自己株式の取得は資産の取得ではなく、減資と同じ株主資本の部分清算と解するのが税務の原則です。
 減資の場合には出資した元本を超える払戻しがあるとき、その超える部分についてみなし配当という扱いになります。自己株取得も同じで、出資額(100%資本組入れだったら従来の額面金額)を超えた対価での自己株取得では、その超える部分についてみなし配当という扱いになります。


みなし配当にならない例外ケース

 利益積立のない赤字体質会社ではみなし配当はありえません。それ以外で、自己株取得でみなし配当にならないケースとしては次のようなものがあります。
@上場株式一般の「市場取引」での自己株取得。買い手が誰か不明で自社株買いにあたるか分からないため、譲渡側は単純な株式譲渡。
A端株主の端株の買取請求又は単元未満株式の買取請求による買取等でも、譲渡側は単純な株式譲渡。
B合併に反対する被合併法人の株主の買取請求に基づく買取りの場合、譲渡側は単純な株式譲渡。相続税の納税のために相続取得の非上場株式を発行会社が買い取る場合、譲渡側は単純な株式譲渡。さらに、相続税額の取得費加算制度の適用もあり。
C株式交換完全子法人となる会社の株式を事前に所有していたことにより、自己が完全親法人となる株式交換で自己株式の割当を受けることになった場合。
D適格現物分配により交付する資産が被現物分配法人の自己株式である場合。
E事業の全部の譲受けや合併又は適格分割若しくは適格現物出資に際し移転資産に含まれる自己株式を取得する場合。


税務簿価も取引価額がそのまま

 自己株式の税務簿価には株主資本の部分払戻しをしたと解される価額が付されるのが原則です。いわゆる資本金等の額、に対応する金額です。
 それに対し、上記のみなし配当非該当のケースでは、取得価額がそのまま税務簿価となります。
なお、それ以外で取得価額を税務簿価とする例外的ケースですが、平成14年の法改正より前から取得していた自己株式については付随費用を含めた取得原価のままで税務簿価となります。


 自己株取得は、株主資本の部分払戻し
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「繰越欠損金を巡る緩和と制限」

2011/10/04 00:06
組織再編と繰越欠損金の引継ぎ

 法人間の取引価額は時価であることを原則とする、という時代には、法人の繰越欠損金が引き継がれたり、制限を受けたりということはありませんでしたが、平成13年の企業組織再編税制の施行に伴い、簿価での資産異動が法人間で出来るようになってからは、適格合併での繰越欠損金の引継ぎが認められるようになりました。


欠損金使用への喧しい制限

 しかし、その裏側として、欠損金引継ぎに神経質な要件が規定されるに歩調を合わせて、資産受け入れ法人側の欠損金の使用制限もやかましくなりました。
 すなわち、引継ぎ欠損金を使って当期利益を圧縮することとは逆の、組織再編で得ることとなる当期利益を自分の過去の繰越欠損金で圧縮することにも制限が付されるようになったのです。


グループ法人税制へも波及

 組織再編は合併や会社分割などばかりでなく、グループ法人税制の施行以後は、現物配当も組織再編行為に分類されるようになりました。金銭以外で配当を受けたら過去の繰越欠損金が使えなくなってしまった、と言うようなことが起こり得るようになりました。
 また、含み損を抱えた資産の受け入れによる3年以内の実現損は損金不算入、逆に、含み益を抱えた資産の受け入れではその含み益分だけ、受け入れ法人の自己の切捨て繰越欠損金が減殺されます。


引き算から足し算への変更の特例

 因みに、昨年度の政令改正で、事業を移転しない適格組織再編成等の場合、明細書の添付を要件として、切り捨てられる欠損金額を移転資産の含み益の範囲内とすることができる特例が設けられました。
 さらに、今年度の政令改正で、適格現物分配による移転資産が親会社の自己株式である場合には、含み益がある場合でも、ゼロとして、この特例を適用することになりました。そして、移転資産が親会社の自己株式のみであるときは、明細書の添付も不要とされています。


制限の対象となるケースは少ない

 なお、これらの制限は、組織再編する法人間の支配関係が過去5年以上に遡及できるときなどには適用ありません。会社買い取りやM&Aで新しくグループ内に入ってきた法人との関係で注意すべきことです。


欠損金と含み損の使用制限は、 意外なところにあるな!!
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「今年の税制改正 著しい下落の評価損だが」

2011/09/30 22:19
債務超過子法人の清算での想定外

 グループ法人税制では、完全支配関係にある親子会社間で、子会社が解散した場合に親会社が「子会社の未処理欠損金額を引き継ぐ」ことになり、その代わり子会社株式消滅損は認識しません。
 ところで、解散子会社の残余財産確定までに、親会社において子会社株式の評価損を子会社の資産状態の著しい悪化を理由に計上してしまえば、子会社株式消滅損は生じなくなり,それでも未処理欠損金額の引継ぎはできました。


損失の二重計上だとして法改正

 導入1年目の昨年度では、上記のような評価損計上の可能性について、立法当局において事前に気付かれていなかったようで、本年度の税制改正では、このような評価損は損金算入できないものとすることとされました。
 具体的には、
@清算中の内国法人
A解散をすることが見込まれる内国法人(除く合併解散)
B内国法人でその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
 この3つの子会社株式の評価損が損金算入できないこととなりました。
 この改正は,改正法の施行日である6月30日以後に行われる評価換え等から適用されています。


子会社株式の売却損でも同じ

 グループ関係の会社が複数あるとき、債務超過欠損子会社株式をグループ内の他の法人に売却するとした場合には、譲渡法人に売却損が計上され、譲り受け法人に未処理欠損金が引継がれることになります。
 ただし、グループ法人内での譲渡で帳簿価額1000万円以上のものについては、譲渡損益はそのままでは計上できないので、会社の解散・清算による消滅の時まで、損金算入時期が遅れることになります。
 すぐ評価損をするのではなく、タイミングの遅れた譲渡損でもよいとするならば、別々の会社にではありますが、株式の損失計上と未処理欠損金の引継ぎとの両方の計上は相変わらず可能です。抜け穴ふさぎをしたつもりなのでしょうが、来年度はグループ内譲渡損の計上否認の税制改正をしないと、不完全です。

 こんな抜け穴が、まだ残っているよ
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「今年の税制改正 税控除と寄附文化の行方」

2011/09/27 23:48
寄附金控除の今年の税制改正

(1)国、地方公共団体、日本赤十字社及び中央共同募金会等への義援金については、総所得金額等の80%を限度に寄附金控除(所得控除)ができます。
(2)被災者支援活動を行う認定NPO法人等が募集する特定震災指定寄附金については、もし寄附の全額がその特定震災指定寄附金だったら、総所得金額等の80%を限度に寄附額の40%を寄附金控除(税額控除で所得税の25%を限度)とすることができます。
(3)日本赤十字社や中央共同募金会、国などに義援金として寄付する場合にも「ふるさと納税」扱いとなり、住民税の寄附金控除の額が手厚くなります。
 以上の寄附金控除には2000円の足切りがあります。
(4)6月30日施行の平成23年度税制改正で特定寄附信託制度が創設されました。
非営利団体への計画的寄附を目的に金銭を信託した場合の寄附金控除と利子非課税の特例措置が設けられています。


寄附金控除に寄附促進効果があるのか

 寄附金控除の制度創設や拡充が日本の寄附文化の醸成に貢献しているか、についての関西社会経済研究所調査報告があります。
●震災から約3ヵ月間の1人当たりの寄附支出額は9443円でした。寄附金を階級別にみると、最も割合で高いのは「2000円以上5000円未満」の19.0%で、「1万円以上2万円未満」は12.9%、10万円以上は1.3%でした。世帯所得が1千万円以上になると、1人当たり寄附支出額が急増し、また、寄附は件数でみると1万円未満の小口が71.1%と圧倒的ですが、寄附総額への貢献は大口が85%を占めています。
●寄附者のうち「寄附金控除」を震災寄附の誘因とした人は19.1%。つまり、80%以上の寄附者が、寄附金控除の有無に拘わらず寄付しています。


手厳しいまとめ

 上記調査の「まとめ」によると、寄附金控除の拡充が寄附行動に及ぼした効果は小さく、不必要な政策であり、寄附金控除は高所得者層に対する寄付促進効果を持つものの、税収を減少させるマイナス面があるので、詳細に検証する必要がある、と手厳しい結論になっています。
 しかし、もっと長い眼でみる必要もあるように思われます。


税金は、間接寄附。義捐金は、直接寄附
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「マイナス資本金等の歴史」

2011/09/21 19:32
マイナスはなかった以前とネーミング

 資本積立金については、平成13年の改正でマイナスの発生があり得ることとなり、平成18年からは「資本金等の額」とネーミングされるようになりました。
 利益積立金も同じで、そのマイナスとなったときの不都合がさまざま指摘されたところで、不都合への対処として法令改正が何度もなされています。


第一は自己株取得とみなし配当
 平成19年度の法人税政令の改正で、「自己株式を取得する直前の資本金等の額」がゼロ以下である場合は、所有株式に対応する資本金等の額及び減少資本金等の額は「ゼロ」とすることとされました。
 みなし配当の計算においても、マイナス資本金等の額の場合、交付金銭等の全額が、株主に対するみなし配当となることとされました。
 その他、資本の払戻しや分割型分割の場面でも同様の問題があるので類似の改正がされています。


第二は清算所得の廃止

  残余財産−資本金等−利益積立金=清算所得
 清算所得課税の公式はこの通りだったので、これだと、赤字つづきの会社が清算すると、マイナスの利益積立金についてのマイナス計算になり、課税所得が生ずることになってしまう不合理をもたらします。実務では資本金等と利益積立金のマイナスは清算所得計算上、法律を無視して、ゼロと扱っていました。
 この不都合を解決するために、平成22年度の法改正で、清算所得課税制度を廃止してしまいました。


第三は債務免除益への課税回避

 残余財産がないと見込まれる場合には、期限切れ欠損金(マイナス利益積立金)の損金算入が認められる、との平成22年度税制改正を承けてさらに、マイナス資本金等の額も損金算入することができるとの本年、平成23年度税制改正がありました。
 清算年度での債務免除益課税が起きないようにするためです。
 これは、一見、資本と利益の混同のように見え、事実そうなのかもしれませんが、譲渡損や評価損として損金算入されていたものが、法改正で資本金等にされることが多々あるようになったことを承けてのことと考えられます。

資本と利益の混同?
マイナス資本金等に係る今年の税制改正!!
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「グループ法人税制 移転資産の期中償却の可否」

2011/09/21 04:32
償却計算の平成22年改正

 平成13年から、減価償却は「各事業年度終了の時において有する」資産を対象とする、という規定になっています。
 ただし、適格組織再編により資産の移転がなされるときは事業年度末とは限らないので、その移転日の前日を年度末とみなして償却計算をすることができるとされています。これを「期中損金経理」と言うと規定されています。昨年改正でこの仲間に適格現物分配が含まれるようになりました。


譲渡損益調整資産の場合の公開情報

 それでは、期中に譲渡や滅失や非適格組織再編やで、期末に存在しなくなる資産についての償却費については、「期中損金経理」をしてもよいとの規定がないので、損金算入できないのでしょうか。
 グループ法人税制についての平成22年10月6日付公開情報によると、譲渡損益調整資産についての譲渡時点までの「期中償却額」は損金算入となり、譲渡損益調整資産の帳簿価額1,000万円の判定も期中償却額控除後による、としています。


どういう理解をすればよいか

 期末に存在する資産、そして適格現物分配等での期中移転資産については減価償却に関する規定がある、ということは確かなことです。
 それに対して、期末に存在しない期中異動資産で、異動事由が適格現物分配等でないものについては、減価償却に関する定めはありません。定めが無いのだったら償却してよいのか、よくないのか。
 ここが思案のしどころですが、定めが無いのだから、償却してよいのだ、と理解すると、当局から披歴されている色々な文書情報のつじつまが合います。


期中異動資産の償却原理

 そうすると、期末に存在しない期中異動資産に係る償却規定の理解を整合的にまとめると、次のように言えることになります。
@ 償却費の計上が許される適格再編の「期中損金経理」規定は、優遇規定なのではなく、2ヶ月以内の税務署への届け出を課した制限規定である。
A 適格再編以外での期中異動資産については、別段の定めが無いので、会計慣行による「期中償却額」がそのまま損金算入となる。


 当局情報は、法律に反することになっていても、構わないよ、という意味のものではない。
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「ディスカウント債の税務」

2011/09/20 08:46
ディスカウント債とは

 募集広告で目にする「ディスカウント債」は、最近人気があるようです。
 ディスカウント債とは、「利付債」と「割引債(ゼロクーポン債)」の2つに分類される債券の種類のひとつで、この両分類の両方の性格を併せ持ったものです。
 利付債と同様に定期的に利子を受け取ることができ、しかも割引債のように額面から一定額が割り引かれて発行されるので、最終的な実質利回りが相当に高いことをセールスポイントにしています。


債券は国や企業などの借用証書

 債券の発行の時点で、額面金額や利率、返済日(償還日)が決まっていて、利付債の場合は、発行時に支払ったお金が償還時にそのまま戻り、保有期間中は、月1回とか年2回とか決まった利払い日に決まった利子が支払われます。
 それに対し、割引債には保有期間中の利子の支払いがなく、その代わり、額面より安い金額で発行され、償還時に額面金額が戻ってきます。


ディスカウント債の税制

 ディスカウント債は、一般の利付債と同じ課税関係です。利子は20%の源泉分離課税となります。ただ、もともと利率が低いので負担感はそれほどないでしょう。
 償還差益は雑所得としで総合課税されます。発行価格が低い分、償還差益は多く、給与所得など所得合算で課税されるので、税負担は無視できません。
 ただし、償還期間に応じた利率制限(7年未満の場合0.1%以上など)を充足していれば、償還前譲渡による利益は非課税です。償還直前の譲渡益なら償還差益とあまり変わらないので、税制有利選択を前提にすると税引き後実質利回りは一段と良くなります。


新興国のものが目立つ

 ブラジルレアル、南アフリカランド、インドルピーなど新興国の通貨建て債権が目立っています。年利率は0.5%程度ですが、償還による最終利回りが10%を超えているものが多数です。
 ただし購入には、発行体の信用リスク、為替変動リスクがあることをきちんと理解しておくことが肝要です。


有利でも、リスクを考えると躊躇するな
償還前譲渡は個人同士だとババ抜きみたいなものだけど、法人が少し割り得くに買えばお互いメリットがあるね。
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「子育世帯を支えるという理念」

2011/09/14 23:22
子ども手当と児童手当

 子ども手当は民主党が平成21年のマニフェストに掲げた目玉政策で、社会全体で子育て世帯を支えるという理念に沿って、平成22年度から中学生までの子どもを対象に、所得制限なしに一律で月額13,000円を支給しました。
 児童手当は子ども手当の導入前に実施されていた政策で、年収800万円程度のところに所得制限を置き、額は、1人目または2人目であれば、月額5,000円、3人目以降であれば、月額10,000円、3歳未満の児童に対する児童手当の額は、出生順位にかかわらず一律10,000円支給でした。


3党合意の新こども手当

民主・自民・公明3党は8月4日に子ども手当の見直しで正式に合意し、今年10月から一律の支給額を変更し、0〜3歳未満は15,000円、3歳〜小学生は10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生は10,000円とすることにしました。
 さらに、来年度には子ども手当を児童手当に衣替えし、支給対象を世帯年収960万円以下とする所得制限が設けられます。


年少扶養親族控除も子ども手当てもない

子ども手当の導入に伴って年少扶養控除(所得税で38万円)が廃止されており、さらに今後、年収960万円で所得制限が設けられると、夫婦でそれぞれ500万円づつ稼いでいる子育て家庭では控除も手当もなくなります。


年少扶養控除廃止と子ども手当での補填

 年少扶養親族控除が廃止されたことにより、所得税(5〜40%)と住民税(10%)は下記のようにそれぞれの税率段階に応じて、扶養親族1人当たりの税額が増えています。
38× 5%+33×10%= 5.20万円
38×10%+33×10%= 7.10万円
38×20%+33×10%=10.90万円
38×23%+33×10%=12.04万円
38×33%+33×10%=15.84万円
38×40%+33×10%=18.50万円
 所得税率33%、40%ラインの人は、今後子ども手当支給対象外です。共働き世帯では、23%ラインの人も対象外でしょう。20%ラインのところで、税の増を子ども手当の支給でやっと補填している状況です。
 子育て世代に優しくない税制がこのままでよいのか、疑問になります。
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「特別分配金と普通分配金」

2011/09/13 20:28
高い分配金という魅力

 高い分配金を掲げた投信が人気を集めており、その高さの魅力に引かれて、毎月分配型の株式投資信託に投資しているという人がいると思います。
 受け取る分配金には、特別分配金と普通分配金があり、源泉分離課税の場合でも、申告分離課税の場合でも、特別分配金には課税がされません。非課税分配金なんて美味しそうな話ですが・・・・
 それがどう違うのか、ここでおさらいしたいと思います。


勘違いをしていませんか?分配の原資

 追加型の株式投信の場合、運用が始まった後も時価(基準価額)で購入できます。税金計算では、この実際に買い付けた価格を個別元本とみなします。
 比較的多くの人が勘違いしていますが、投信は分配金が出るとその分だけファンド外に資産が流出し、基準価額が下がります。
 この分配落ち後の基準価額が個別元本を割り込まなければ分配金は利益から支払われていることになり、これを普通分配金と呼びます。
 普通分配金は配当所得として扱われ、10%の税金が源泉徴収されます。
 逆に、分配落ち後の基準価額が個別元本を下回るような場合でも分配金が出ることがあります。投資家の元本の一部を原資に支払っているもので、これを特別分配金と呼びます。元本が分配金という形で戻ってくるだけなので、  特別分配金は非課税になります。


蛸あし配当の特別分配金

 特別分配金はボーナスのような印象を受けますが、実際はファンドが収益を上げていなくても支払われます。
 分配金の種類は郵送書類や電子交付サービスでわかるので、必ず確認すべきです。特別分配金の支払いが続くと基準価額が大きく下がることになります。分配金の水準だけではなく、基準価額の推移にも注目すべきです。
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「今年の税制改正 FX税制の一本化」

2011/09/12 23:16
ミセス・ワタナベとは?

 2007年頃から東京のインターバンク市場にて、昼をはさんで午後になると大きな要因はないにもかかわらず、為替相場が反対方向へ振れる現象がしばしば見られ、為替のプロたちが予期せぬ損をさせられました。
 こうした状況が頻繁に起こったため、原因を探っていくと、主に日本の主婦やサラリーマンなどの個人のFX投資家が、昼休みを利用して一斉に注文を出していたことが判明しました。一時は為替取引の3割以上を占め、大きな影響力を持ったため、彼女たちの逆張りに、海外にて「ミセス・ワタナベ」という呼び名が生まれました。


取引所と店頭の税制一本化

 ミセス・ワタナベに朗報となる外国為替証拠金(FX)の損失繰越・損益通算に関する税制改正が、今年成立しています。
 取引所FXは現在、「雑所得・申告分離課税」に分類されており、税率は利益の金額にかかわらず一律20%。損失がある場合は3年にわたり繰越控除ができます。
 一方店頭FXは「雑所得・総合課税」とされ、損失は繰り越しできず、税率も住民税と併せた最高50%にも達する累進課税の対象です。
 これが、来年1月1日以降取引分から「雑所得・申告分離課税」に統一されることになりました。


税制一本化の範囲はもっと広い

 FXと同じく証拠金を預け、レバレッジをかけて取引を行うその他のCFDと呼ばれる株式や株価指数等を対象にする日経平均先物などや、更に金融商品先物取引だけでなく商品先物取引も含め、従来から申告分離の雑所得とされていたものが全て一本化されました。


今年の決済か、来年の決済か?

 FX取引では売買を決済した取引だけが、その年の確定申告の対象になります。店頭FX取引を手がけ、損失を抱えてしまっている場合は決済を来年まで先送りした方が有利かもしれませんし、雑所得の年金所得と相殺するなら今年中の決済が必要です。
 「含み益」が大きい場合は、課税額の試算が必要です。課税所得が330万円以下なら年内に決済した方が納税額は少なくて済みます。


4億円のFX無申告ミセス・ワタナベ同士のネット対談もあるのね
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「今年の税制改正 目玉となった雇用促進税制」

2011/09/11 17:17
今年度税制改正の目玉

 平成23年度税制改正は大ナタを振るわれて、肝心なものが国会の店晒しの憂き目を見ていますが、そんな中で成案となったものの目玉とされているのが雇用促進税制です。
 雇用の維持・促進を図るのが目的で、雇用者数の増加に応じて税額控除でき、事業規模拡大を検討している企業にとっては意味のある制度と言えます。


使い勝手が悪そう

 制度の適用には、事業年度開始時および終了時の年2回、ハローワークに雇用促進計画の書類を提出する手続を踏まなければなりません。
 「雇用促進計画」を作成し、同計画の達成状況を確認した書類の写しを確定申告書に添付する必要があるからです。
 制度適用を検討している法人としては事前の準備が必要です。


優遇内容と要件

 法人税額の10%、中小企業者等であれば20%を限度に「雇用増加数×20万円」の税額控除ができるというものです。
 雇用者とは、法人の役員とその親族等と、使用人兼務役員以外の一般被保険者に該当する者で、要件としては以下の5つです。
@ 前年度と当年度で雇用主の都合による離職者がいない
A 前年度末の雇用者数よりも5人以上(中小企業者等は2人以上)増加している
B 基準雇用者割合(=(当年度末雇用者数−前年度末雇用者数)/前年度末雇用者数)が10%以上
C 当年度の給与等支給額が比較給与等支給額(=前年度給与等支給額+前年度給与等支給額×基準雇用者割合×30%)以上
D 風俗営業等を行っていない


適用対象の期間と臨時の措置

 雇用促進税制は、開始事業年度が、23年4月1日から26年3月31日である青色申告の法人と個人に適用されます。
 新法の施行が6月30日でしたから、4月1日開始事業年度の法人にも遡及適用させているわけです。これに対応して、厚生労働省も、23年4月1日から8月31日までの開始事業年度について23年10月31日まで受け付けるとしています。
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